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週刊エコノミスト Online メタバース&Web3.0のすごい世界

バーチャル渋谷は3年目、バーチャル病院にバーチャル空港も 村田晋一郎/浜田健太郎(編集部)

多くの若者でにぎわうバーチャル渋谷 渋谷未来デザイン提供
多くの若者でにぎわうバーチャル渋谷 渋谷未来デザイン提供

 メタバースといわれても、「何のこと」「まだまだこれからの技術」という印象を持つ人も多いだろう。しかし、日本には既に2年間で約100万人を集めたメタバース空間がある。それがバーチャル渋谷だ。>>特集「メタバース&Web3.0のすごい世界」はこちら

 東京・渋谷の街をネット上に再現した仮想空間。パソコンやスマホ、あるいはゴーグルのようなVR(仮想現実)端末を装着して参加する。筆者もスマホで試してみた。

 まず自分の代わりになるアバター(分身)を作成して、渋谷のスクランブル交差点に降り立った。前方にはファッションビルの109が見え、そこに向かって道玄坂を進む。すると右手にはマツモトキヨシを模した「シゲモトツヨシ」、みずほ銀行を模した「みさと銀行」、左手にはサンドラッグを模した「ムーンドラッグ」、「ビックカメラ」を模した「レックカメラ」がある。現実の建物とは名称を微妙に変えてあるが、カラーリングはほぼ同じ看板が並ぶ。

 バーチャル渋谷では定期的にイベントを開催していて、代表的なものは10月に開催する「ハロウィーンフェス」だ。最初に開催されたのは2020年。渋谷のハロウィーンは例年多くの人でにぎわうが、この年はコロナ禍だった。渋谷区も外出自粛を呼びかけた。その代わりに仮想空間で盛り上がろうと、バーチャル渋谷で「ハロウィーンフェス」を10月26日から31日まで開催した。

 巨大なジャック・オー・ランタン(カボチャのお化けのちょうちん)が空中に浮かぶなど、街中がハロウィーン仕様になり、参加者は仮装したアバターで練り歩き、ハロウィーン気分を楽しんだ。

 スクランブル交差点付近に設けられた特別ステージなどでは、各種のイベントを開催。初日は、きゃりーぱみゅぱみゅのライブが予定されていたが、アクセスが集中しすぎてサーバーがダウンし、3日目に仕切り直ししたほど。ほかにも人気アーティストのBiSH(ビッシュ)やお笑い芸人の和牛らがライブに登場し、盛り上げに一役買った。約40万人が参加した。

 翌21年は、クリーピーナッツや電気グルーヴの石野卓球など人気ミュージシャンが登場。ほかにもアニメ「名探偵コナン」の主演声優によるトークライブなどが行われ、延べ55万人が参加した。22年は10月26〜31日に開催する予定で、さらなる参加者の増加が見込まれる。

 バーチャル渋谷は、渋谷区の外郭団体である渋谷未来デザインと渋谷区観光協会、KDDIを中心とする「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」が立ち上げた。仮想空間の技術は、ベンチャー企業のクラスター(東京都品川区)が開発したプラットフォームを採用している。他にも「バーチャル大阪」「バーチャル原宿」があり、相互に移動できる。

企業も続々出展

 メタバース上で既に経済圏が動いているのが、ベンチャー企業のHIKKY(ヒッキー、東京都渋谷区)が運営する「バーチャルマーケット」だ。18年から始まったネット上の展示・販売会場で、現在春と冬に開催し、1回の企業出展数は60〜80社、来場者は100万人を超えている。

 最近では、8月13〜28日に「バーチャルマーケット2022サマー」を開催した。バーチャル都市の「パラリアルニューヨーク」と「パラリアル大阪」に企業出展エリアを設け、セブンイレブン、大丸松坂屋、BEAMS(ビームス)、みずほ銀行をはじめ60社の企業が出展。個人を中心とした一般のクリエーターの出展数も540に上る。

 ファッションブランドのビームスは服などを販売。店員がアバターで接客し、来店した人に実際の服を売った。一般的なネット通販とは違い、その場で客と店員が会話し、相談しながら選べる。買った服は後日、自宅に届く。ネットとリアルの融合だ。

 もともとは3D画像のクリエーターが作品を売買する場として始まったため、主な来場者は20〜30代の男性が中心。この層は高性能パソコンでVRを利用することもあり、以前の開催でシンガポールのMegadodo Simulation Games社がVRゴーグル「デカギア」の予約販売を1億円以上受け付けたという。

 一方で、大丸松坂屋などにとっては、リアル店舗の主要顧客層は年配の女性だが、若年層の男性のアプローチに、バーチャルマーケットが役立っているという。

ジェットコースターに乗る

 SMBC日興証券は21、22年に「バーチャルマーケット」に仮想ブースを出店して、「株価連動ジェットコースター」を提供した。04年から21年までの日経平均株価の推移に連動する形で、コースターが上下動をするのだという。

 記者も体験した。眼鏡を着けたままVRゴーグルを頭に装着して、両手にコントローラーを握ると、東京・渋谷の公園通り沿いにSMBC日興証券の「支店」が現れた。コントローラーを操作して「店内」を進み、階段を上るとジェットコースターの乗り場が現れ、コースターが滑り込んできた。

 視覚的にコースターが動き出すと、実際に乗っているかのような震動が伝わってくる。座っているのは普通の椅子だ。視覚を通じて実際に乗っている錯覚を起こすのだという。見慣れた渋谷の「景色」を背景にジェットコースターが疾走すると、記者は「ああ、これはすごい」と思わず声を上げた。システムは、バーチャルマーケットを企画したヒッキーが開発した。

 昨年のイベントでは他にもアナリストが登場して投資相談会を行い、今年は営業担当社員が投資相談に乗るサービスを提供した。

 次回は「バーチャルマーケット2022ウインター」が12月3〜18日に開催、「パラリアルパリ」「パラリアル名古屋」「パラリアル札幌」に企業出展会場が設けられる。

順天堂病院がバーチャルに

 メタバースは医療分野への応用でも期待されている。順天堂大学と日本IBMは11月、メタバース上に「バーチャルホスピタル」を開業する予定だ。順天堂大学医学部付属順天堂病院(東京都文京区)にそっくりに再現したメタバース空間を提供する。

 活用例は、メンタルヘルスや生活習慣病の改善などがある。現実世界でメンタル障害を抱える患者が、…

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