バーチャルが主、リアルが従の複合現実が誕生する 國光宏尚
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さよなら“旧世代”
メタバースとWeb3.0の世界とはどういうものか。最終的には、現在一般的になりつつある仮想現実(バーチャルリアリティー、VR)や、拡張現実(オーグメンテッドリアリティー、AR)がさらに進化した形、すなわち複合現実(ミックスドリアリティー、MR)と呼ばれる世界になると思っている。
そこでは現実(リアル)と仮想(バーチャル)が境目なくつながり、ユーザーの用途に応じて交わっていく。例えば、対面での会議は100%リアルなものだが、ゴーグルなどVR端末を装着してVR空間上で会議をしたら、100%バーチャルな会議になる。
そこで、部屋が殺風景だから、AR端末を装着して、背景をハワイの海の画面にし、人々は同じ部屋にいて対面で会議をしたら、70%リアル、30%バーチャル、の世界といえるだろう。さらに別の部屋にいる人をホログラム(立体映像)で投影して会議をしたら、70%バーチャル、30%リアルといえるかもしれない。こうしたいろいろな利用の仕方が必要に応じて生まれてくる。
若い世代から変わる
メタバースの実現で重要な考え方は「バーチャル・ファースト」だ。これまでリアルが「主」で、バーチャルが「従」だった。インターネットやIT(情報技術)は、リアルの世界をより便利に効率的に楽しくするためのものとして発展してきた。しかし、バーチャルが「主」で、リアルが「従」の世界が起こりつつある。
おそらく20年以内に、若者の世界のGDP(国内総生産)は、リアルな世界をバーチャルが超えるだろう。先進国では人々の自由な時間とお金、すなわち可処分時間と可処分所得がほとんど変わらない中で、多くのサービスが可処分時間の奪い合いをしている。そして多くの時間を使うところに多くのお金を使う。
今の若い世代は、リアルで友人と会うより、LINE(ライン)や動画共有サイトTikTok(ティックトック)、オンラインゲームのフォートナイトなどバーチャルの空間で友人と交流する時間が長くなりつつある。バーチャル上のコミュニティーがコミュニケーションの中心になると、そこでの自らの分身である「アバター」の服や靴などにお金を使うようになる。
事実、フォートナイトでは「スキン」と呼ばれるコスチュームをアバターに施すが、19年にスキン関連の売上高は42億2100万ドルとなっている。少なくとも若者はリアルよりもバーチャルな世界で多くの時間を使うよ…
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週刊エコノミスト
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