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資源・エネルギー学者が斬る・視点争点

自然資本も国富の一部、その軽視は経営リスクに 馬奈木俊介

 人間の活動によって世界的に減少している「自然資本」。自然資本増加の取り組みが欠かせない。

鍵となる気候変動対策と生物多様性保全

 甚大な被害をもたらすようになった気候変動の影響緩和に向け、世界は二酸化炭素(CO₂)排出量削減へ向けて動き出している。その潮流の中で、注目が集まっているのが自然資本だ。

 自然資本とは、自然によって形成される資本のことで、森、水や土地、動植物などがそれに当たる。脱炭素対策や生物多様性を守る活動によって維持・増加が期待できる。

 2021年6月に開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)で「30年までに生物多様性の減少傾向を食い止め、回復に向かわせる」という地球規模の目標(ネーチャーポジティブ)が合意され、21年10月には国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)閣僚級会合で「少なくとも30年までに生物多様性の損失を逆転させ回復させる」とする「昆明宣言」を採択した。

 また、同じ年の11月、英グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では世界の平均気温上昇を産業革命前から1.5度に抑えるという目標が決定された。

 これまで経済成長を求める傍らで見落とされてきた自然資本について、気候変動解決対応策と同時に生物多様性の保全にも目を向けることが重要であると指摘されたのだ。

 また、同年6月には企業の事業活動がもたらす自然資本へのリスクと機会を適切に評価、対外的に報告できることをめざす自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature related Financial Disclosures:TNFD)が発足した。これによって、金融機関や企業は生物多様性保全に関連したリスクなどを開示することが求められるようになる。

4割の自然資本が減少

 英国政府は今後数十年の経済成長の見通しに対する生物多様性の損失の影響を調査し、人間と自然の関わりにおける持続可能性の検討を始めることとし、ケンブリッジ大学のダスグプタ教授に依頼し、報告書を作成した。

 筆者も参加したこの報告書は、21年に「ダスグプタ・レビュー(The Economics of Biodiversity : The Dasgupta Review)」として発表された。このレビューでは、1992年から14年の間に自然資本が40%減じているという新国富報告書の結果に英国は政策として対応することとした。

 これまでも、筆者は国連・新国富報告書の中で、日本を含めた世界の自然資本の減少を取り上げている。過去3年でも、中国、インド、パキスタン、タイ、アフリカといった途上国・地域でも自然資本報告書を各国の依頼で国家報告書として発表した。

 自然資本をはじめとする富の価値を分析・評価していくことで、大規模な植林計画など気候変動対策×生物多様性を進め、気候変動対策をビジネスにし、森林再生と同時に地域コミュニティーの活性化、雇用創出といった効果が期待されるものである。

 この流れを推進するきっかけが二つの国連報告書グループの融合である。「生物多様性及び生態系サー…

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