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「3%物価上昇」31年前との大きな落差=斎藤太郎

 2022年9月の消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、上昇率が前月から0.2ポイント拡大し、前年比3.0%となった。

 消費者物価が3%台の伸びとなったのは、消費税率引き上げの影響を除くと91年8月以来、31年1カ月ぶりだが、その中身は当時と現在で大きく異なる。

 約30年前の91年と現在の経済環境を比較してみよう。最も異なるのは、現在は原油高、円安が物価を大きく押し上げているのに対し、当時は原油高、円高の進展によって輸入物価が下落していたことである。

 また、足元では、賃金が伸び悩む中で物価が大きく上昇したため、実質賃金は下落しているが、当時は名目賃金の伸びが高く、実質賃金はプラスの伸びを維持していた。

 物価上昇の中身も大きく異なっている。22年9月のコアCPI上昇率3.0%のうち、全体の8割以上をエネルギーと食料の寄与が占めているのに対し、91年のコアCPI上昇率2.9%のうち、エネルギーと食料の寄与は4割程度であった。

 財、サービス別には、足元の物価上昇のほとんど全てが財によるもので、サービスの寄与はほぼゼロだが、91年は財の寄与が約6割、サービスの寄与が約4割であった(図1)。

上がらないサービス価格

 品目ごとの動きを詳しく見るために、品目別価格変動分布を確認すると、22年9月は、コアCPI上昇率が3%近くまで高まる中でも、品目別の上昇率はゼロ%近傍が最も多く、全体の21%となっている。次に割合が高いのは1%近傍で15%、日本銀行の物価目標である2%近傍の割合は9%にとどまっている。

 これに対し、91年は最も割合が高いのは直近と同じくゼロ%近傍だが、その水準は1…

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週刊エコノミスト

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