FRBが覚悟する「ITバブル崩壊後」並みの景気後退 愛宕伸康
米連邦準備制度理事会(FRB)は9月20、21日の公開市場委員会(FOMC)で予想通り0.75%の利上げを決めた。政策金利の誘導レンジは3.00~3.25%となったが、同時に公表された政策金利見通しを見ると、今後も段階的な利上げを続け、来年にかけて4.50~4.75%とすることが想定されている。
今年2月までゼロ金利政策をとっていたことを考えると、スピードの速さに驚かされる。なぜこれほど急ぐのか。一つは、昨年前半から始まった高インフレを「一時的」と見誤り、利上げ開始が出遅れたという負い目である。40年ぶりの高インフレを許したFRBにとって、インフレ鎮静化が最優先課題であるのは言うまでもない。
二つ目は2次的波及への懸念だ。インフレが供給制約によるものであったとしても、賃金や人々のインフレ予想(期待)の上振れにつながればインフレが長期化する。パウエル議長が8月の講演で「今のインフレは強い需要と供給制約の結果であり、確かに金融政策は需要の方に作用する。しかし、いずれの背景も物価安定の責務を軽減するものではない」としたのも、2次的波及への警戒からだ。
だが、これだけ急ピッチで利上げをすれば、景気には相当なダメージが加わる。パウエル議長も9月の記者会見で「経済の軟着陸(ソフトランディング)は非常に困難だ」と本音を吐露したが、FRBが景気後退を覚悟していることは彼らの物価見通しからも透けて見える。9月のFOMCで公表された見通しを見ると、個人消費支出(PCE)デフレーター(食品及びエネルギー除く)が23年第4四半期には前年比3.1%に落ち着くことになっている。ただし「財」のデフレを前提…
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週刊エコノミスト
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