サービス物価が上がる米国と上がらない日本=渡辺浩志
商品市況が下落している。ウクライナ危機や異常気象などの供給制約を考えれば、鉱物資源や食料などの下値は堅そうだ。また、この冬はロシアの報復的な供給停止により、天然ガスの更なる価格高騰が予想される。
だが、現在はこうした供給面の問題よりも需要面の不安の方が大きいようだ。
中国ではゼロコロナ政策や電力不足で工場の操業停止が頻発している。欧米はインフレ退治の金融引き締めを急いでいる。世界景気はこの先、一段の悪化が確実視され、需要減により商品市況には更なる下押し圧力がかかりそうだ。
図1の通り、商品市況は米国の長期金利に1年半ほど遅れて動く傾向がある。現在の米金利の水準を見る限り、商品市況の下落余地はなお大きいと思われる。
消費者物価指数(CPI)を財(モノ)とサービスに分けてみると、モノのインフレは商品市況に半年ほど遅れて動いている。これは多くの国で共通だ。商品市況の前年比はすでにマイナスに転じているため、向こう半年ほどで世界のモノのインフレは沈静化する公算が大きい。
そうなると、市場の関心は商品市況高によるコストプッシュ・インフレから、国内景気を反映するホームメード・インフレへと移る。今後はサービスのインフレへの注目度が一段と高まろう(図2)。
マンパワーに頼るサービスのインフレ率は、各国の賃金上昇率に比例する。米国では景気の過熱と人手不足を背景に賃金上昇率が高まり、サービスのインフレが加速している。賃金上昇と価格転嫁の連鎖反応によって、インフレはもう一段加速し得る。
賃金とサービス物価の沈静化が見通せるようになるまで(少なくとも来年終盤まで)、米国では金融引き締めが続く公算が大き…
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週刊エコノミスト
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