米「利上げやり過ぎ」の結末が心配になる経済指標の危険な兆候=藻谷俊介
6月中旬以降、インフレ後の世界を織り込む形で各国の長期金利は低下し、株価は上昇した。ところが8月下旬から米連邦準備制度理事会(FRB)のインフレに対するタカ派的姿勢が改めて表面化し、欧米市場は6月以前の形勢に逆戻りしてしまった。
中国、インド、ブラジルなど欧米以外の主要国を含めて世界全体で消費者物価の動向を見ると、筆者のこれまでの主張通り、今もインフレ率は着実に正常化に向かっている。日本もそうである。こうした国々では、株価は低下しても二番底を付けてはいない。
欧米についてはインフレ期待が依然として強く、中央銀行の姿勢も並外れて強硬である。とはいえ足元の変化を見ると、米国の消費者物価も壁にぶち当たったかのように上昇率を下げており、躍起になって利上げを継続しなければならないようには見えない。
図1は米国の消費者物価指数(CPI)を拡大したグラフだ。6月まではサービス価格の上昇やエネルギー価格の再上昇に伴い、結構な勢いで上昇していたCPIも、7~8月は急減速している。図内に表記したように6~8月の上昇率を年率換算すると、わずか0.6%だ。その前の3~5月の8.1%からの激減ぶりは「顕著」としか表現できない。
実質輸入も減少
戦争という突発事によって生じた波乱は急速に拡大し、また急速に縮みうる。中央銀行はその変化の速さに迅速に対応していく必要があり、インフレ率の異なる計算スパンも多面的に勘案する必要があるだろう。今のタイミングで先々の政策金利予想を引き上げたことは、やり過ぎであると市場に判断されるのも仕方ない。
小幅とはいえ、米国の国内総生産(GDP)は2四半期連続でマイナス成長となっ…
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週刊エコノミスト
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