資源・エネルギー

疑問だらけ「前例のない」電気・ガス高騰対策 土守豪

岸田首相が指示した対策は効果的といえるのか
岸田首相が指示した対策は効果的といえるのか

 岸田文雄首相の「前例のない」電気・ガス料金の高騰対策は、突っ込みどころ満載の内容となった。今回の対策は、電気・ガス料金を現行より安くするための対策ではなく、ガソリン補助金と同じく、あくまで過度な値上がりを防ぐ「激変緩和措置」ということを踏まえておく必要がある。

 電気料金の激変緩和措置は、家庭向けで「1キロワット時当たり7円」を国が補助する。政府の試算では、月間使用量400キロワット時の標準世帯だと、月額2800円程度の支援となる。これは現行電気料金の2割程度に相当し、電力会社による2023年4月時点の値上がり分を全額吸収できる想定だという。支援対象世帯は約8800万世帯に達する見込みだ。23年10月以降は支援規模を縮小する。23年2月に請求される「1月分の検針・支払い」から支援が適用される。

 経済産業省は11月中にも電気小売り事業者からの補助金申請受け付けや審査などを代行する団体を入札で選定する予定だ。電力小売り事業者への補助金支給は、支援額分を割り引いた電気料金請求書を集計、発送した後に、補助該当額を申請する後払い方式と、あらかじめ補助該当額を概算し、補助金を前払いで受け取る二つの方法が導入される予定だ。

脱炭素に逆行

 まさに前例のない対策だが、エネルギー関係者などからは疑問の声も聞こえてくる。今回の電気料金高騰は、化石燃料費の高騰が大きな要因であることは確かだが、全国に約700社ある電力小売り事業者の中には、再生可能エネルギー100%を売りにしている企業もある。こうした企業にも補助金を支給するのか。

 また、多数の新電力会社は日本卸電力取引所(JEPX)から電気を買い、消費者…

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週刊エコノミスト

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