世界屈指の米肥料会社モザイク、肥料高騰で純益3倍 永井知美
Mosaic 肥料需給逼迫は長期化へ/55
米モザイクは化学肥料の生産・販売で世界屈指の企業である。化学肥料の3要素とされる窒素、リン酸、カリのうちリン酸とカリに特化し、リン酸肥料の生産で世界最大、カリでも世界4大メーカーの一角を占める。リン鉱山、カリ鉱山を所有し、原料の採掘から肥料の生産・販売まで一貫して手掛ける。地域別売上高販売比率ではブラジル43%、米国32%、カナダ6%、中国4%など世界各地に展開しているが、とりわけ米大陸に強い(2021年12月期の数値)。
肥料は土壌の保水度を高め、肥沃(ひよく)度を増すことで農作物の収量を飛躍的に高め、世界の食卓を支えてきたが、普段は黒衣的存在で目立つことはない。その肥料がここへきて注目を集めている。21年秋以降、主要生産国である中国の輸出規制で価格が上昇していたところにロシアのウクライナ侵攻が追い打ちをかけ、価格が記録的水準で高止まりしているためである。
モザイクは、穀物メジャー・米カーギルの肥料部門と1909年設立の老舗肥料メーカー、米IMCグローバルが統合する形で04年に誕生した。化学肥料は比較的単純な工程で生産されることから、半導体のような高度な生産技術は必要とされない。他社との差別化を図ることは容易ではなく、競争軸はいきおい「価格」となる。肥料の原価の約6割を原料が占めることもあり、市場で勝ち抜くには原料である鉱山を押さえることがポイントである。モザイクは米国、ブラジル等にリン鉱山、カナダ、米国等にカリ鉱山を所有している。
一時は赤字転落
肥料業界は浮き沈みが激しい。肥料価格は世界景気、食料価格、天候等で大きく上下し、モザイクの業績も、肥料価格下落の影響で赤字転落する年もあった。
00年代以降、肥料業界では再編が進んだ。兼業で肥料事業を手掛けていた穀物メジャーや資源大手が、変動の大きさを嫌気して相次いで撤退した一方、肥料専業各社は合併による規模拡大や得意分野への注力で生き残りを図った。モザイクは、13年に米CFインダストリーズからリン酸事業を買収してリン酸を強化し、16年には鉄鉱石の生産で世界最大のヴァーレ(ブラジル…
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週刊エコノミスト
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