教養・歴史書評

邪馬台国は?倭の五王は? 日本古代史の新説次々 今谷明

 日本の古代史は文献が少ないため、主として地下からの発見、すなわち考古史料の発掘によって常に書き換えられる特性がある。2000年に「旧石器捏造(ねつぞう)事件」が発覚し、一時は考古学の信用が損なわれたが、近年は事件の衝撃も薄れ、考古学の諸発見が注目を集めている。

『古代史の定説を疑う』(瀧音能之、水谷千秋監修、宝島社新書、1210円)はこうした考古学の新知見に加え、文献史学による新説なども動員して、日本古代史の書き換えを試みた意欲的な作品といえよう。

 まず、日本列島にいつごろ人類が定住したかを、放射性同位元素による測定や人骨、動物骨のDNA解析などによって解明している。これだけを見ても、我々が受けてきた歴史教育の古代史像が一変していることが知られ、今さらのように学問の進展に驚かざるを得ない。

 本書では、邪馬台国論争において大和説が有力になりつつあること、また讃・珍・済・興・武の「倭(わ)の五王」では、讃を応神天皇ではないかと推定する新説が紹介されている。

 実は「讃=応神天皇」説は、評者も新説が出される以前からそうではないかと推測しており、大学の授業などでも主張してきた。それは応神天皇の実…

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