世界的なITソリューション企業 コグニザントが日本事業を強化「自動車、銀行、通信などに力入れる」=Economist View
コグニザントは、米国に本社を置くITソリューションカンパニー。企業がデジタル時代に変革を迫られるなか、世界中の顧客にソリューション(課題解決)を提供し、経営を支援している。日本法人コグニザントジャパンの村上申次社長に日本での戦略などを聞いた。
世界の成功事例を日本企業に最適化する
コグニザントの強みについて村上社長は、「海外の多くの成功事例を知っていて、それを日本の企業に合うようにカスタマイズして提供できること」を挙げる。コグニザントは1994年の設立以来、米国と欧州を中心に37カ国で事業を展開し、世界の製薬企業上位30社のすべて、欧州の銀行上位10行のうち9行、世界のインターネット企業上位10社のうち6社などが顧客になっていると公表している。
社会のデジタル化が進むなか、企業はDX(デジタル・トランスフォーメーション)が急務とされるが、日本は出遅れが指摘される。世界の多種多様な業界での成功事例を基に日本の企業の相談に乗り、最適なシステムやビジネスモデルを提案できれば、日本企業にとっても心強い。
その際、大きな力を発揮するのが「日本の従業員の半数以上がバイリンガルであることだ」と村上社長は説明する。「外資企業ならバイリンガルは当たり前と思うかもしれないが、そんなことはない。海外の担当者とやり取りして、さまざまな事例を十分理解し、日本の企業に本当に必要なものを提供できる人は多くない」。
また、日本の従業員は約1000人だが、日本の案件を担当するインドのエンジニアらは2000人に上る。彼らとシステムの設計段階から密にやり取りして日本の顧客の希望通りのものを作るのにも英語力が重要だという。
世界での成功事例としては、毎日10万件の保険の申請給付業務を行う保険会社に自動化ツールを提供して処理時間を7倍に速め、年間1500万㌦のコスト削減につなげた。また、コンビニエンスストアに予測分析を強化するサービスを提供して、売上高が20%増加したという。
コグニザントの知名度向上に貢献している事例として、自動車レースのフォーミュラ1(F1)チーム、アストンマーティンとの協業がある。技術が日進月歩のレースの世界で、データ分析などを担い、千分の1秒単位で競うマシンの性能向上や戦略立案に関わっている。2022年シーズンは元世界王者のセバスチャン・ベッテル選手が在籍したチームだ。
ただ日本での知名度はまだ高いとは言えない。村上社長は21年に就任した際、25年に日本での売上高を5倍にする目標を掲げた。そのために、現在強みがある製薬、保険以外に自動車、銀行、通信の分野に力を入れていくという。さらに、CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)、ソフトバンクとパートナーを組み、新たな顧客を開拓する体制を整えている。
ITコンサル業界は、国内、外資が多数参入して激しい競争を繰り広げている。村上社長は一番のカギは「人」と強調する。優秀な人材が助け合ってチームで仕事をする文化が根付いているのがコグニザントの特徴だとし、「テクノロジーだけではなく、顧客のビジネス課題のソリューションを提供して、日本を元気にできる楽しい会社にしたい」と語る。