資源・エネルギー学者が斬る・視点争点

電力卸市場で2年前の冬に起きた異常な価格高騰のわけ 杜依濛

電力卸市場での異常な価格高騰が新電力会社の経営を苦しめている。

過度な「ブロック入札」で売り切れ発生か

 2020年12月下旬から21年1月の中旬にかけて、日本卸電力取引所(JEPX)の電力価格が長期間、高騰が続き、話題となった。特に、21年1月13日には1日の平均価格が過去最高の154.6円/キロワット時を記録した。これに比べて、21年夏には高騰が発生せず、平均価格は約9.1円/キロワット時だった。20年冬季に市場価格の高騰が続く期間において、ある不自然なことが指摘された。それは、発電容量に余裕があるにもかかわらず、JEPX市場での売り入札量のほぼ全量が約定、つまり、売り札の売り切れが起きていることだ(図1)。

 電力の発電部門と小売り部門が取引するJEPX市場では、スポット市場(1日前市場)、当日市場(時間前市場)、先渡し市場の三つの取引形態がある。代表的なスポット市場を例にとると、翌日に発電、販売する電気を前日までに入札し、売買を成立させる。具体的には、1日の取引を30分ごとの48コマに分け、50キロワット時を最低単位として、入札価格を1キロワット時当たり0.01円刻みで入れる。入札締め切り後に、売り入札価格の安い方と買い入札価格の高い方から順番に並べ、売りカーブと買いカーブを決める。約定価格と約定量は、売りカーブと買いカーブの交点で決まる。約定価格より安い売り入札価格を入れた売り手も、高い買い入札価格を入れた買い手もこの約定価格で取引できる。図2−1で示すように、平常時においては、電力市場価格は電源の発電費用で決定されるため、通常は数円/キロワット時程度にとどまる。その一方、売り入札量の急激な減少による「売り切れ」が発生するときに、市場価格は小売事業者(旧一般電気事業者〈以下、旧一電〉)と呼ばれる大手電力会社の小売部門や16年の電力小売り自由化後に新規参入した電力会社〈以下、新電力〉)の買い入札価格によって決定されることとなる。図2−2で示すように、「売り切れ」の状態においては、買いカーブが直線になる売りカーブと交差することになるため、買いカーブが右に移動するほど、市場価格が上昇する。

「罰則」避け高値入札

 日本では現在、旧一電が全国発電電力量の約8割を賄っている。新電力の大多数は電源を持っていないため、大きく市場に依存している。市場で「売り切れ」が発生する場合、新電力がJEPX市場で必要分の電力を購入できず、消費者の需要を満たせない場合、送配電会社から融通してもらうしかない。その場合、市場価格よりも高い罰則的な料金(インバランス料金)を支払わなければならない。高い料金の支払いを避けるために、新電力は確実に電力を調達できるように高値で買い入札した。電力市場に提供する電力量(売り入札量)が急激に減少したことを受け、新電力の間で「買い争い」が生じた結果、電力市場価格の高騰が発生した。

 20年冬季に、JEPX市場が売り不足に陥った一因として、「ブロック入札」の過度の使用が疑われた。JEPX市場での入札は30分という取引単位で行われているが、発電事業者が電源を数…

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週刊エコノミスト

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