欧州ステランティスは4兆円投資でEV75車種へ拡大 宮川淳子
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Stellantis テスラへの競争力向上へ/58
ステランティスは、欧米大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と仏プジョー・グループ(PSA)が2021年1月に経営統合した欧州自動車メーカーだ。21年1〜12月期の新車販売台数は、欧州310万台、北米200万台を含めた計650万台で世界第4位である。ラグジュアリーからコンパクトカーまで多数の有名ブランドを持ち、無形資産の価値は2兆円を超えている。30年に向けて環境負荷の少ない低公害車(LEV)の比率を大幅に引き上げる目標を掲げていることから、テスラなどの電気自動車(EV)専業メーカーに対して今後は競争力を高めていくとみられる。
ステランティスは有名ブランドを多数抱える自動車メーカー同士の経営統合であることから、車のラインアップが充実している。車種別では、「マセラティ」のラグジュアリーを筆頭に、プレミアム、ピックアップトラック、スポーツ用多目的車(SUV)、コンパクトカーまで幅広い。また、ブランド別では、FCAから伊「フィアット」や「アルファ・ロメオ」、米「クライスラー」や「ジープ」があり、PSAから仏「プジョー」や「シトロエン」、独「オペル」などを含めた計14の有名ブランドがそろっている。
このため、ステランティスの財務諸表には、21年末で155億ユーロ(約2.2兆円)にのぼる巨額のブランド価値が無形資産として計上され、総資産の9%近くを占めている。ブランド価値は企業の競争力や付加価値を生む原動力であることから、ステランティスの競争優位性や成長力がその高いブランド力に裏付けされていることを示している。
高い市場シェアと収益
FCAとPSAが長年積み重ねてきた実績を背景に、ステランティスの市場シェアや収益性は底堅い。22年1〜9月期の北米、欧州、南米での市場シェアはそれぞれ11%、18%、23%を占め、各ブランドの根強い人気を表している(出所:政府機関資料などから同社集計)。特に欧米の主要先進国は世界の新車販売の約半分を占める大きな市場であり、ステランティスは売上高の90%近くをこれらの地域からあげている…
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週刊エコノミスト
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