世界最大手レアアースの江西金力永磁科 富岡浩司
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Jl Mag Rare-Earth 中国の脱炭素化を支える/57
江西金力永磁科(金力永磁)はハイテク製品に必要なレアアース(希土類)のネオジム磁石で世界最大手の中国企業。最先端かつ高性能の永久磁石を生産する。米調査会社フロスト・アンド・サリバンの資料によると2020年の世界シェアは14.5%でトップだ。08年の会社設立以降、一貫して省エネや環境対策で多く使用されるネオジム磁石の研究開発や生産、販売に携わってきた。
ネオジム磁石はレアアースのネオジム(Nd)が主原料だ。これまで産業界で一般的だった酸化鉄を使ったフェライト磁石に代わり、主流になりつつある。強力な磁力が特徴で、家庭内でも収納用磁石などとして国内の100円ショップでもマグネット商品として売られている。
中国の脱炭素化
金力永磁の製品は高品質とカスタマイズ化を強みに、電気自動車など新エネルギー車や自動車部品、風力発電、電気製品や工業用ロボットなど幅広い分野に使われている。日本とも関わりが深く、21年12月に日本電産と指定サプライヤー契約を締結した。18年9月に中国本土の深圳市場に、22年1月に香港市場に株式を上場した。
金力永磁は中国を代表するESG関連銘柄でもある。中国は世界最大の二酸化炭素(CO₂)排出国であり、政府は30年までにCO₂排出量をピークアウトさせ、60年までにカーボンニュートラル(炭素中立)を実現することを目標にしている。金力永磁はその政策に大きく貢献する企業に位置付けられている。例えば、世界の電力消費の約50%が電気モーターによるものだが、そこに希土類永久磁石を使用するだけでエネルギー消費量が15~20%も削減できる。
また、家電製品に使用すれば、電力消費の改善を通じて部材の小型化・軽量化が可能になる。それだけに、ネオジム磁石を主力とする希土類永久磁石の市場の将来性は非常に大きい。世界消費量は15年の14.66万トンから20年は20.95万トンに増加し、25年には30.52万トンに膨らむと見られている。
金力永磁の用途別売上高構成比ではEV(電気自動車)駆動用モーターに使われるネオジム磁石が最…
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週刊エコノミスト
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