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米雇用状況は底堅く、市場の楽観とは裏腹に根強い賃金インフレ=荒武秀至
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12月2日に米労働省が発表した11月の米雇用統計は、大幅な金融引き締めにもかかわらず雇用状況は底堅く、賃金インフレも根強いことを示唆した。
非農業部門雇用者数は前月より26.3万人増加した。年初来の月平均39.2万人からは減速したが、前回の景気拡大期(2009年6月~20年2月)の月平均16.3万人より増加ペースが速い(図)。
戦後の主な金融引き締め局面は14回。うち9回は景気後退入りしたが、5回は後退を回避できた。免れた5回の共通点は雇用が増え続けたこと。今回も月間26.3万人も増えており、回避できる可能性も残る。
人手不足が賃上げ圧力
しかし問題は、労働市場が引き締まり、賃上げ圧力が強まっていること。「完全雇用と物価安定」を目標とする米連邦準備制度理事会(FRB)としては、本来は両方とも達成したい。だが11月の賃金上昇率が前年比5.1%と再加速する中、一時的に雇用を犠牲にしてでもインフレ抑制を優先するしかないのだ。
コロナ禍の巣ごもり需要と超低金利の恩恵をうけてきた情報技術(IT)業界だが、行動規制撤廃と利上げという逆回転をうけ、ツイッターやメタ(フェイスブックの親会社)など大手IT業界は一斉に大量リストラを余儀なくされた。
民間調査会社によると、IT企業だけで11月は5.2万人も削減され、全体では7.6万人に及んだ。だが、専門知識を携えるIT人材は再就職先を見つけやすい。むしろ、11月の失業者数は前月より4.8万人減少、失業率も3.7%の歴史的低水準だ。
背景にはサービス業の完全復活がある。11月は娯楽・宿泊・外食で8.8万人、教育・医療で8.2万人もの雇用が増加し、雇用者数を押し上げた。だが人手不足は深刻で、求人1033万人(22年10月)に対し失業者は610万人(同…
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週刊エコノミスト
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