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マーケット・金融 エコノミスト賞受賞者が考える 日本経済の処方箋

日銀はマクロ・ショックのリスクを配分する金融市場を育成すべきだ 竹田陽介

日本経済の処方箋/2 政府との新しい政策協調の下、日銀のリーダーシップにおいて行政・財政の肥大化を回避し、金融政策はマクロ・ショックのリスクシェアリングに貢献できる。

 2050年までに二酸化炭素排出量をゼロにする脱炭素社会の実現は、悪化する地球温暖化問題への対策の一丁目一番地である。環境問題にとどまらず、豊かさを実感できる社会の構築に向けて、企業の社会的責任の遂行が求められる今、企業業績につながる金融環境の構築のため、ESG(環境・社会・企業統治)投資の活発化など、金融市場も動き出している。金融システムの安定化を図る役割を担う中央銀行は、サポート体制の一翼を担う。

 現在、日本銀行は2%の安定した物価上昇率を目指すインフレーション・ターゲティングの枠組みの下、長期国債を含め非伝統的な金融資産の購入により異次元の金融緩和を続行中である。「日本版アコード」と呼ばれる13年1月に政府と日銀との間で合意された共同声明は、一体となってデフレからの脱却を目指すなど、日本経済の再生に向けて、政府および日銀の政策連携強化を明文化した。

「三本の矢」に例えられる財政政策と金融政策との協調が合意された。消費者物価の前年比上昇率2%という物価安定目標の公約のみならず、財政当局と中央銀行との間の双務的な政策協調がうたわれている。

「国債管理政策」と化す

 しかしながら、現在の財政運営において持続可能な財政構造を確立するための取り組みは不十分であり、16年9月から実施されているイールドカーブ・コントロール(YCC)に顕著なように、日銀の長期国債の購入量は、長期金利が0.25%の上限を上回らないように受動的に決定されている。金融政策は事実上の「国債管理政策」と化している。

 このような片務的な政策協調は、政策のリーダーシップが財政当局に偏り、金融政策が統合された政府の予算制約式を受動的に満たすという意味で、中央銀行の政策空間が極めて制限されている状況を表す。財政的リーダーシップの下では、先決される財政政策のコミットメントにより中央銀行が意図する金融政策を独立して運営することが難しくなる。財政リーダーシップを体現する「日本版アコード」を一旦白紙にすることが必要である。

 50年のカーボン・ニュートラルの目標に向けて、日銀がリーダーシップを発揮できる余地はあるのだろうか。

 金融技術としての金融政策が新しい金融環境に直面する現場では、政策当局を取り巻く時論と暗黙知に支えられた「政策思想」が、将来の目標の達成に対して蓋然(がいぜん)性の高い政策手段を選ぶ。政策思想が、マクロ経済のあるべき姿とそのアプローチに関する考え方を現実的に調整する。慣性を伴う技術的適応の結果、金融政策は経路依存性を示すことになる。

 ゼロ金利導入までの日銀の場合、資金の過不足の調節を通じた超短期銀行間金利の安定化に、実績を残してきた。1980年代後半における資産バブルに対して、日銀の金融引き締めが時機を逸した上、行き過ぎであったかどうかを巡り、90年代半ばに「マネーサプライ論争」が生じた。

 その際には、超短期銀行間金利コールレート…

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週刊エコノミスト

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