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経済・企業 エコノミスト賞受賞者が考える 日本経済の処方箋

課題解決の糸口は「脱都市化」にあり 小倉義明

日本経済の処方箋/3 少子高齢化、自然災害リスク、脱炭素の課題解決には地域金融機関のリスク耐性・リスクマネーの供給力と組織力の確立が急務だ。

 いつの時代にも社会的課題は数多くあったであろうが、現在の日本はまさに内憂外患で、積み残された課題の大きさに圧倒されそうである。数多くの課題のうち、経済にかかわる重要な中長期的課題は、①世界的に前例のない少子高齢化、②増大する自然災害のリスク、③脱炭素であろう。一見、まったく異なる課題のように見えるが、いずれの課題についても共通するのは、「脱都市化」が解決の糸口になりそうな点である。

「集積」の費用と便益

 まず、過去数十年にわたって社会的課題とされてきた少子高齢化は、日本経済にとって最も深刻な課題といえよう。生産年齢人口(15~64歳)の減少は、労働力不足による供給制約と需要縮小の両方をもたらして経済を収縮させる。2010年代に入って、特に中小企業における人手不足は常態化している(図)。

 せっかくのビジネスチャンスを人手不足のために生かせない事態が、随所で発生しているかもしれない。出生数の大きな変動は社会的にさまざまなコストをもたらす。今後数十年間は、生産年齢人口に対して老齢人口が過大な状況が続く。その間、年金制度など社会制度を維持するための工夫が不可欠であることは言うまでもないが、さらにその先を見据えて出生数を安定的に維持する方策を今のうちに講じておく必要があるだろう。

 二つ目の災害リスクについては、高い確率で起きるとされる南海トラフを震源とする地震や首都直下型地震などは常に意識されている。11年の東日本大震災後に多くの企業が生産拠点を東南アジアなど海外に移した。当時の超円高の影響だけではなく、サプライチェーン(供給網)の多角化が主な目的であった。

 気候変動の結果、水害の激甚化が進んでいる。実際に水害被害額は18~19年に2年連続で1兆円を超えるなど、前例のない高水準で推移している。20世紀末から21世紀末までに平均気温が2度上昇すれば、日本での豪雨の発生頻度は1.5倍程度増えるとの気象庁の予測がある。海面も上昇しつつある。低地の大都市部にはこれまで重点的に対策が施されてきたが、今後想定外の大水害に襲われる可能性はゼロではない。

 三つ目の脱炭素は、こうした気候変動への対応であり、各国政府は次々に規制導入することでこれを推進している。歴史上、エネルギー源の転換は産業革命をもたらしてきた。水力(水車)から、石炭による蒸気機関、そして石油・火力発電と、エネルギー源が変わるごとに化石燃料の集まる港近くの都市への産業集中が進み、人々の生活様式が都市化してきた。脱炭素はこうした都市化を逆回転させる200年ぶりの大変革なのかもしれない。これはリスクでもあり、機会でもある。

 これらの三つの課題に共通することは、「集積の費用」の相対的な増大と「集積の便益」の相対的な低下である。つまり、これらの課題は脱都市化を人々に迫っているように見える。

 まず、少子化に関してよく知られている事実は、大都市部で出生率が低いことである。地方圏では、おおむ…

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週刊エコノミスト

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