国際・政治独眼経眼

市場の利下げ期待に冷や水浴びせるFRB 渡辺浩志

 長引く高インフレを退治すべく、米連邦準備制度理事会(FRB)は、急ピッチで利上げを行っている。

 2022年12月の会合では利上げ幅をそれまでの0.75%から0.5%へ縮小させたが、年初にほぼゼロだった政策金利は4.5%に到達した。また、FRBは23年中に政策金利を5%超へ引き上げる方針を示した。

 足元で、政策金利は米国の名目潜在成長率(4%)を上回っている(図1)。名目潜在成長率とは、米国経済に投資をしたときに得られる平均的なリターンであり、政策金利は投資のコストだ。コストがリターンを上回るなら、米国への投資は「逆ざや」であり、するだけ損だ。投資マネーは実物資産から貯蓄へと引き揚げられ、米国は23年後半にも景気後退に陥る公算が大きい。

 こうして利上げは「投資環境」を悪化させるが、それと同時に「金融環境」も引き締める。利上げを受けて短期金利が大きく上昇する一方、将来の景気後退を予期して長期金利はあまり上がらなくなり、「逆イールド(長短金利差のマイナス幅)」が拡大している。このことは、銀行の預貸業務の収益悪化を意味し、貸し渋りを招いて企業や家計の資金繰りを厳しくする。

 また利上げは倒産リスクを高め企業の信用力を落とす。社債は売られ「信用スプレッド(社債利回り-国債利回り)」が拡大するとともに、貸し倒れへの警戒から銀行は貸し出し態度を厳格化する。

貸し出し態度は臨界水準

 図2の通り、過去…

残り475文字(全文1075文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月9日号

EV失速の真相16 EV販売は企業ごとに明暗 利益を出せるのは3社程度■野辺継男20 高成長テスラに変調 HV好調のトヨタ株 5年ぶり時価総額逆転が視野に■遠藤功治22 最高益の真実 トヨタ、長期的に避けられない構造転換■中西孝樹25 中国市場 航続距離、コスト、充電性能 止まらない中国車の進化■湯 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事