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イールドカーブ・コントロールを上手に使って景気後退に備える法 愛宕伸康

 日本銀行は2022年12月の金融政策決定会合(MPM)で、10年金利の許容変動幅をプラスマイナス0.25%から0.5%に拡大した。

 日銀は現在、短期金利にマイナス0.1%、10年金利に0%程度の目標を定めるイールドカーブ・コントロール(YCC)を実施している。ただ、10年金利を厳格に0%に誘導しようとすると、国債の流動性が低下したり、イールドカーブがゆがんだり、といった副作用が強まるため、21年3月からその変動幅をプラスマイナス0.25%まで許容するとした。

 だが、22年3月ごろからの米長期金利の急騰で日本の10年金利にも上昇圧力がかかり、ほどなく上限の0.25%に到達。国債を積極的に買い入れ、力ずくで10年金利を0.25%に抑え込む状況が続き、国債の流動性が極端に低下した。

 債券市場サーベイの11月調査では(図1)、国債の流動性を示すビッド・アスク・スプレッドDIがマイナス50と、これまでなら日銀が「異次元緩和の持続性確保」を理由に動いてきた水準まで低下している。しかし、黒田東彦総裁は許容変動幅の拡大を否定する態度を取り、12月MPMの結果は完全に虚を突かれた形となった。

操作対象年限を「3年」に

 市場の関心は日銀の次なる一手に移った。筆者が考える今後の展開はこうだ。まず23年は欧米がかなり高い確率で景気後退に陥る。当然、日本の景気にも影響が及び、追加緩和に焦点が移る。だが、今の…

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週刊エコノミスト

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