週刊エコノミスト Online小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

原子力発電所の新増設問題、本当に安全は確保できるのか/157

ジャン=ピエール・デュピュイ(1941年~)。フランスの思想家。専門は科学哲学。原発について積極的に発言している。著書に『ありえないことが現実になるとき』などがある。(イラスト:いご昭二)
ジャン=ピエール・デュピュイ(1941年~)。フランスの思想家。専門は科学哲学。原発について積極的に発言している。著書に『ありえないことが現実になるとき』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 原子力発電所の新増設問題、本当に安全は確保できるのか

 エネルギー不足の問題もあって、政府は原子力発電所の新増設を打ち出していますが、どうしても福島第1原発の悲惨な事故を思い出してしまいます。どうすれば安全を確保できるのでしょうか?(自営業・50代男性)

A 未来を起点に不測の事態を予言する物語性を育み、「破局」の回避力を持とう

 世界的にカーボンニュートラルが求められる中、再生可能エネルギーを推進しつつも、同時にある程度は原子力発電に頼らざるを得ないというのが現実でしょう。ただ、これは政府の方針の大きな転換であり、よほど安全を確保できる確証がない限り、国民は不安を抱き続けることになります。

 安全性の審査基準はより厳格なものになるでしょうが、核という危険物質を使った原子力のようなテクノロジーには、絶対安全などというものはあり得ません。そこで参考にしたいのが、フランスの哲学者ジャン・ピエール=デュピュイの「破局」に関する思想。デュピュイはシステムが閾値(いきち)を超え、急激に別のものに転換してしまうことを破局と定義します。

気づきが地球を救う

 そのうえで問題は、その意味での破局が起こるのはわかっていても、人々が信じようとしない点にあると指摘します。現に福島第1原発事故は事故発生を想定せず安全神話をうのみにしていた中で起きました。これを「システム的な悪」と呼んでいます。そこに道徳的な意味で…

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