資源・エネルギー学者が斬る・視点争点

企業主導でカーボンクレジット急伸 馬奈木俊介

 民間のカーボンクレジットは、公的なクレジットと比べて迅速に発行できる強みがある。

自治体と連携したビジネスにも期待

 国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27、2022年11月)において、気候災害で「損失と損害」を受けた途上国を支援するための基金の創設が一つの大きな成果となった。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の1.5度特別報告書(18年発表)によれば、このままの経済活動が続けば、早ければ30年には1.5度の上昇に達し、50年には4度程度の上昇が見込まれるとされる。温室効果ガス(GHG)削減の仕組み化が望まれる。

 日本のGHGの総排出量は、20年度で11億5000万トン(二酸化炭素〈CO₂〉換算)で、前年度比5.1%減となっている。

 国、自治体、企業、消費者とさまざまな主体がGHG削減に取り組むことが求められる。特に大きな影響力がある企業に求められるものは大きい。これまで企業が行ってきた取り組みには、省エネの活用、サプライチェーン(供給網)やエネルギー源の開発といった直接的なものに加え、オフセット(相殺)という間接的な方法がある。これは自社で直接削減するのではなく、総排出量の上限のもと行われるキャップ&トレード制度とCO₂削減量をクレジットとして取引するものだ。

 排出されるCO₂に価格をつけるカーボンクレジットには、公的なものでは、国をまたぐものとして2国間クレジット制度や国内で取引されるJ-クレジットがある。しかし、発行までに4年ほどがかかり短期で設計できるものではないという問題点がある。適切な販売時期の関係を得られるかどうかという心配もある。そこで、発行が早く、海外では一番伸びている民間のボランタリー(自主的な)クレジットの選択も視野に入る。

総額10億米ドル超えの市場

 冒頭に述べたCOP27会期中に、国連がCOP26で設立した「非国家アクターによるネットゼロ排出宣言に関するハイレベル専門家グループ」によるネットゼロについての報告書が発表された。この中で、ネットゼロに向けての具体的な10の提言が示され、その一つに「ボランタリークレジットの活用」が挙げられている。

 ボランタリークレジットには、ゴールド・スタンダードや米国の大手認証機関ベラのVCSなどが存在し、ボランタリーカーボン市場は世界的に成長し続けている。世界銀行のリポート「炭素価格の現状とトレンド2022」には、21年11月に同市場の総額が10億米ドルを超えたこと、さらには21年の同市場のクレジット取引量が20年よりも9割増加したことが報告されている。

 日本の地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画では、30年度のGHG削減の中期目標は、13年度の水準から46%削減を目指す。この削減が実現した場合、その削減量のクレジットは簡易な計算で約3400億円になりそうだ。ただし価格はどのマーケットで買うかによっても変化するため、確約されるものではない。

33の企業が参画

 今後、カーボンクレジット市場は、ますます成長することが予想される。

 22年12月、一般社団法人ナチュラルキャピタルを中…

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週刊エコノミスト

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