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古楽器・古楽奏法を超えて魅せる新たな音楽 チケット売り切れ必至 梅津時比古

2023年は室内楽プロジェクトに挑む庄司紗矢香 ©Laura Stevens
2023年は室内楽プロジェクトに挑む庄司紗矢香 ©Laura Stevens

クラシック 庄司紗矢香 with モディリアーニ弦楽四重奏団 & ベンジャミン・グローヴナー

 いろいろな演奏家がいるのに、誰か一人を「世界最高」とか、「並ぶ者がいない」などと決めつけたくはない。それぞれに固有に存在価値があるのが芸術だからである。

 しかしながら、昨年12月に行われたバイオリンの庄司紗矢香とピアノのジャンルカ・カシオーリのデュオ・リサイタルの来日ツアーを聴いて「今、最高のバイオリニストだ」と思わざるを得なかった。

 今回、庄司に感じ入ったのは、彼女がピリオド(古楽)奏法に大きく踏み込み、さらにそこを超えたからである。

 現代の演奏界は極端に言えば、モダン奏法とピリオド奏法に分かれている。作曲された当時の楽器を用いるピリオド奏法は、現代の演奏への反省として、半世紀ほど前に始められた。時代の流れとともに演奏の場が王侯貴族の館からホールになり、それに合わせて広い場でも遠くまで響くように楽器の性能が強力になり、現代では、モーツァルトやベートーベンがなじんでいた楽器の響きとは打って変わったものになっている。

 楽器が変わったこともあって、作曲者の原典に勝手に手を加えるようなことも行われてきた。作曲者が頭に描いていた響きや音楽とかけ離れてしまったのである。その揺り戻しとして、作曲者が聴いていた楽器の奏法に従い、当時、聴かれていたままに音楽を再現しようとするピリオド奏法が急速に広がった。

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