「解散」へ駆け引き続く永田町 地方選苦戦で与党に走る動揺 中田卓二
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岸田文雄首相は2022年末、秋葉賢也前復興相と杉田水脈前総務政務官を更迭した。野党の追及材料を減らして通常国会召集に備えるためだが、それで視界が開けたわけではない。対症療法を改めない限り、23年も不安定な政権運営が続くだろう。
結果求められる首相
首相は1月4日、三重県・伊勢神宮参拝後に現地で記者会見し、「本年も覚悟を持って、先送りできない問題への挑戦を続けていく」と決意を表明した。そのうえで具体策として、春闘でのインフレ率を超える賃上げ実現を要請し、6月の経済財政運営の指針「骨太の方針」策定までに「将来的な子ども予算倍増に向けた大枠を提示する」とも述べた。
22年末、防衛費増額のための増税時期を決めなかったのは先送りではないか、という突っ込みはひとまずおく。首相が24年9月の自民党総裁選で再選を目指すなら、年頭会見で列挙した政策課題に一つ一つ結果を出すしかない。内閣支持率が低迷したままでは、衆院解散という「伝家の宝刀」も抜きようがないからだ。
解散を巡っては永田町でちょっとした駆け引きがあった。萩生田光一政調会長が22年12月25日、フジテレビの番組で「もし増税を決めるなら、国民に信を問うということを国会議員は国民に約束しなければいけない」と述べたのがきっかけだ。
解散は時の首相の専権事項であり、「国会議員が国民に約束する」という言いぶりには違和感が拭えない。萩生田氏は党内最大派閥・安倍派の会長候補の一人。「岸田首相の一存では解散できない」という本音がつい漏れたのではないかと勘繰りたくなる。
茂木敏充幹事長も以前、テレビ番組で岸田政権の構造を古代ローマの「三頭政治」になぞらえたことがある。史実にならえば、首相、麻生太郎副総裁、茂木氏は対等という意味になる。萩生田、茂木両氏の発言は、第5派閥の会長に過ぎない首相の立場を図らずも映し出している。
2日後の12月27日、首相はBS-TBSの番組で「(増税の)スタートの時期はこれから決定するわけだが、それまでには選挙があると思う」と述べた。「24年以降の適切な時期」とあいまいにした法人税、所得税、たばこ税の増税について、首相は詳細を23年中に決める方針だ。したがって首相の発言を素直に解釈すれば、年内解散の可能性が高まる。そうでなくても、政界は5月に広島で開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)後の解散を織り込んで動き出している。
ところが、首相は翌日、毎日新聞など3社のインタビューで「防衛財源の確保については24年以降、27年に向けて段階的に(増税を)実施する。その結果として税が上がる前に(衆院)選挙があることも日程上、可能性の問題としてあり得る。課題の実行の前に選挙をやるか、後にやるかはいろんなケースがある」と軌道修正した。
その直前、政府高官も首相官邸詰めの記者を緊急招集し、記事化OKという前提で同様の解説…
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週刊エコノミスト
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