国際・政治東奔政走

首相「反岸田」野党が3弱状態 防衛増税で民意問う覚悟はあるか 人羅格

記者会見で防衛費増額についての質問などに答える岸田文雄首相(2022年12月16日)
記者会見で防衛費増額についての質問などに答える岸田文雄首相(2022年12月16日)

 2023年の政治が始動した。春に統一地方選を控え、来年秋の自民党総裁選も視界に入ってくる。岸田文雄首相が再選を目指すのであれば、年内の衆院解散という選択もあり得る。

 だが、内閣支持率は低迷し、現状では解散を断行できる状況にない。一方で自民党「反岸田」勢力や、野党も勢いを欠く。民意の審判を仰げぬまま、政権の低空飛行がずるずると続きそうだ。

もはや「青木割れ」寸前

 最後は「政治とカネ」に揺れた歳末だった。

 臨時国会が閉幕しても、自民党の薗浦健太郎衆院議員、秋葉賢也復興相の政治資金疑惑が政権にさらなるダメージを与えた。

 議員辞職した薗浦氏の場合、資金パーティー収入を報告書に過少記入し「私物化」するという、あきれた不祥事だった。両氏とも国会で追及されていたが、手を打たなかった首相の緩さも改めて浮き彫りにした。

 毎日新聞の12月17、18日世論調査で内閣支持率は25%に落ち込み、不支持は69%にのぼった。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る不徹底な対応、閣僚の連続更迭、防衛費増額に伴う唐突な増税方針への反発……。これらが複合して世論の「岸田離れ」が止まらない。

 首相の総裁再選戦略は、23年5月の地元・広島での主要国首脳会議(G7サミット)をテコに衆院を解散し、総選挙勝利で続投を固める展開とみられていた。来秋の総裁選時、政権が浮揚している保証はない。かつて首相が菅義偉前首相を追い落としたように、ライバルに座を追われるかもしれない。

 だが、内閣支持率をみる限り、「サミット後解散」は風前のともしびだ。高止まりしていた自民党の支持率も25%に下落した。

 内閣支持率と与党第1党の支持率を足した数字は政界で「青木率」と呼ばれる。参院自民党のドンといわれた青木幹雄氏がかつて提唱した指標で、「50」を割ると政権危機ラインとされる。前回調査で両者の和は「50」。「青木割れ」寸前である。

 防衛費増額に伴う増税を巡る年末の自民党内の混乱も政権運営に火種を残した。首相に近い「増税容認ライン」と、安倍派や党内タカ派を中心とする「反増税ライン」の確執が火を噴いた。

 首相は「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有という安保政策の転換を決め、5年で43兆円もの防衛費を確保した。故・安倍晋三元首相が提唱した防衛費「国内総生産(GDP)比2%」を念頭に置いた、安倍派などへの配慮を優先した決定だった。

 だが、財源の1兆円相当を増税で賄う方針が、国債増発による対応を主張する党内右派を刺激した。このため、抱き込みどころか路線対立にまで発展した。

 財源を安易な国債頼みとしないことは、ひとつの見識だ。だが、今回の増税プロセスはあまりに唐突だった。いくら「(昨年春から)方針は一貫していた」と首相が釈明しても多くの国民には「寝耳に水」の増税である。

 とりわけ法人税、たばこ税だけでなく、東日本大震災復興に充てる所得税の…

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週刊エコノミスト

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