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国際・政治 東奔政走

政権浮揚のカギ握る対中外交 対応難しくする米国との連携 及川正也

左から、APECサミットに出席した中国の習国家主席(タイ・バンコクで2022年11月19日)と建設中の台湾TSMCの工場で演説するバイデン米大統領(米アリゾナ州で2022年12月6日)
左から、APECサミットに出席した中国の習国家主席(タイ・バンコクで2022年11月19日)と建設中の台湾TSMCの工場で演説するバイデン米大統領(米アリゾナ州で2022年12月6日)

 2023年が明けた。前半は4月に統一地方選、5月に広島での主要7カ国首脳会議(G7サミット)など、内政、外交の大イベントが続く。世界的な景気減速が明確になる中で、新型コロナウイルス感染症やロシアによるウクライナ侵攻、そして国民の日常生活に大きな負担となっているインフレへの対処も引き続き迫られる。

「外交の岸田」を演出

 支持率低迷にあえぐ岸田文雄首相が政権浮揚に向けてもくろんでいるのが対中国外交とされる。8月に日中平和友好条約45周年を迎える節目をとらえて、関係の安定化に道筋をつける狙いがある。国際秩序を大きく左右する米中対立のはざまで日本が独自の戦略を描き、「外交の岸田」を演出したい考えのようだ。

 その伏線は、22年11月17日夜、対面では約3年ぶりとなる日中首脳会談にあった。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に参加するためタイを訪れていた岸田首相と中国の習近平国家主席は約45分にわたって意見交換した。会談も終わりに近づいたころ、習主席は岸田首相の右隣に座る林芳正外相に向かって身を乗り出すようにして「近いうちにぜひ中国にいらしてください」と声を掛け、「詳細は彼と調整してください」と、左隣に座る王毅外相を指さしたという。

 会談では、沖縄県の尖閣諸島周辺の情勢や台湾問題をめぐって双方が主張を言い合ったが、日本政府関係者がとりわけ印象に残ったのは「関係改善に向けた習主席の意欲」を感じたことだったという。「習主席が会談冒頭、笑顔で握手に応じたのをはじめ、岸田首相の厳しい質問にも率直に答えていた」と話す。

 例えば、岸田首相が日中経済の重要性を指摘し、「中国による『ゼロコロナ』政策には、日本の企業も困っているところがある」と話すと、習主席は「新型コロナウイルスの感染が拡大して約3年になり、我慢していた人たちもたくさんいるのだろう」と理解を示したという。規制の大幅緩和に乗り出したのは、その3週間後だった。

 両首脳の率直な物言いは、目の前の対立から、長期的な安定へと視野を広げたことを意味する、と日中外交筋は解説する。「習主席が強調したのは『戦略的な視点から、新時代にふさわしい日中関係を構築する』ことであり、岸田首相が力説したのは『建設的かつ安定的な日中関係の構築を加速する』ことだ。その目標を明確にした」

 林外相の訪中時期は、12月中旬の段階では正式に決まっていないが、年末から年明けを軸に調整されているようだ。

 ただし、それには二つのハードルがあった。一つは、政府が22年12月16日に閣議決定した「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の安保3文書だ。日中首脳会談後、中国外務省は「一日でも早く林外相の訪中を」と要請してきたが、文書決定前に直接クギを刺されるような事態は回避すべきだとの声が強まった。

 3文書では防衛力整備について10年後までに「より早期か…

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