当事者同士が直接向き合う、豪州の「修復的司法」を演劇で提示 濱田元子
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舞台 俳優座「対話」
裁判で白黒つけるのは簡単だ。だが、それで被害者や被害者家族が救われ、事件が起こるに至った問題の根幹が解決できるのだろうか? 劇作家のデヴィッド・ウィリアムソンが、日本ではなじみの薄いオーストラリアの「修復的司法」を、調停人ジャック・マニングを軸に演劇として提示するのが「ジャック・マニング三部作」だ。
ウィリアムソン作品を日本で初めて紹介した俳優座が、2021年に上演したシリーズ第1弾の「面と向かって」に続き、「対話」に挑む。前作と同様、佐和田敬司が翻訳を、森一が演出を手掛ける。
「面と向かって」が扱ったのは社内外での暴力沙汰。裁判での刑罰に代わり、被害者と加害者、家族や同僚らが住民会議で直接話し合うことで関係を修復しようという試みが描かれた。
今回の「対話」は、よりシリアスでセンシティブな問題を扱う。ジャック(八柳(やつやなぎ)豪(たけし))の主催する住民会議に集まったのは、強姦(ごうかん)殺人で医療刑務所に服役中の加害者スコットの母コーラル(山本順子)や姉ゲイル(天明屋(てんみょうや)渚)、弟ミック(辻井亮人(まこと))、おじのボブ(河内浩)と、被害者の父デレク(斉藤淳)と母バーバラ(安藤みどり)、鑑定した精神科医ローリン(佐藤あかり)の7人。両サイドが話し合い、互いを理解することで少しでも摩擦を減らすことを目指す。
コーラルは被害者の両親に直接謝罪したいとい…
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週刊エコノミスト
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