国際・政治ワシントンDC

米最高裁の“ちゃぶ台返し”に備え、同性婚などを保障する法律が成立 西田進一郎

結婚尊重法案に署名するバイデン大統領(中央)=米ホワイトハウスで2022年12月13日 筆者撮影
結婚尊重法案に署名するバイデン大統領(中央)=米ホワイトハウスで2022年12月13日 筆者撮影

 米国で同性どうしが結婚する権利を連邦レベルで保障する「結婚尊重法」が昨年12月に成立した。同性婚が既に広く認められている中で、なぜ今になって法制化されたのか。

 法案の署名式は華やかだった。ホワイトハウスの芝生広場には大勢の人が詰めかけ、同性カップルやLGBTQなど性的少数者の尊厳を象徴するレインボーカラーの帽子をかぶった人もいた。歌手のサム・スミスさんとシンディ・ローパーさんがそれぞれのヒット曲を披露した後、バイデン大統領が「今日は良識と尊厳と愛が認められ、尊重・保護される国を作るための重要な一歩を踏み出した日だ」と演説し、法案に署名した。

 米国では1996年に「結婚保護法(DOMA)」が成立した。婚姻を「一人の男と一人の女による法的結合」と定義するもので、同性婚は認めないという連邦法だ。この時は民主党のクリントン政権だった。

 一方で、婚姻や手続きに関する権限は各州が持っている。2000年代に入ると、東部マサチューセッツ州を皮切りに、同性婚を州法で合法化するところが出てきた。ただし、DOMAがあるため国の法的保障や保護を受けられないケースが問題化した。最高裁は13年にDOMAの規定を違憲だと判示し、15年には同性婚を認めていなかったオハイオ州などの州法を違憲だとする判決を出した。これにより、同性婚は全ての州で事実上合法になった。

 同性婚に関する世論は大きく変わった。ギャラップの調査では、「同性婚が従来の結婚と同じ権利を持つ有効なものとして法律で認められるべきか」との質問に、支持する回答は右肩上がりに増えていった。96年は3割弱だったが、15年は6割、21年には7割に達した。保守的な共和党支持層でも近年は支持が大きく増え、21年には55%だった。

中絶巡る判決が契機

 ただ、最高…

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