今度はガスコンロ! 米国の分断の象徴に 吉村亮太
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米国駐在は今回で3回目となる。着任してアパート探しをする際に、立地、不動産価格、間取りと同じくらい重視している項目に、台所のコンロがガス方式かどうかがある。米国ではIHヒーターはあまり普及していない印象を受けるが、電気コンロを使っているケースは少なくない。
いずれの方式にも一長一短あるのは認識しているが、ガスコンロは鍋の形状や材質を選ばない上、「料理をしている」という気にさせる。自分はまったくの素人だが、テレビの料理番組がガス方式を採用していることが多いのは、それなりの理由があるのだと思う。
販売禁止まで浮上
バイデン大統領の私邸などにおける機密文書の発覚騒動の陰でもうひとつ目立たないが、先日このガスコンロを巡る論争が勃発した。ことの発端は、米国消費者製品安全委員会のメンバーが、空気を汚染する物質を発生させているからという理由で、ガスコンロに対する規制導入に言及したことだ。今年に入り、さらにもう一歩踏み込み、販売禁止措置も選択肢に含まれると発言したので、保守派がかみついた。
小児ぜんそくの症例の13%はガスコンロの使用に起因するという研究リポートが昨年12月に公表された。ガスコンロを擁護する保守派は、両者に因果関係はないとする別のリポートを引き合いに出し、リベラル派がいたずらに国民の恐怖心をあおっているだけと批判する。規模感はかなり異なるが、地球温暖化を巡る対立とまったく同じ構図であることに気づく。
ワシントンDCでは何でも政争の具になるといえばそれまでだが、リベラル派が標的にしたことで、ガスコンロの存在そのものが保守派の政治的信条を表すシンボルになってしまったのだとすれば罪深い。時にシンボルは一致団結を後押しするが、使い方を間違えると分断・対立を助長するからだ。
イデオロギ…
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週刊エコノミスト
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