教養・歴史

低物価が景気低迷の原因ではなかった(編集部)

政府と日銀の共同声明公表後、質問に答える、中央左から白川方明氏(当時・日銀総裁)、麻生太郎氏(当時・副総理兼財務・金融相)、甘利明氏(当時・経済再生担当相)(2013年1月22日)
政府と日銀の共同声明公表後、質問に答える、中央左から白川方明氏(当時・日銀総裁)、麻生太郎氏(当時・副総理兼財務・金融相)、甘利明氏(当時・経済再生担当相)(2013年1月22日)

 デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日銀の政策連携──共同声明(アコード)が公表されてから2023年1月は10年目を迎える。

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 まず政策目標を確認しておこう。日銀の金融緩和が不十分で、それが過度な円高を招いているとの強い批判から、12年末に発足した安倍第2次政権との間で、白川方明総裁(当時)は13年1月初めて2%の物価目標を設定した。日銀は「金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す」とした。

 一方で、政府は機動的なマクロ経済政策運営に努め、イノベーションの強化、規制改革や税制の活用による成長戦略を強力に推進することを明記。財政運営の信認確保の観点から持続可能な財政構造の確立を掲げている(表)。

2%物価目標達成せず

 明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミストは「共同声明は政府に比べて、日銀に大きな負担がかかる内容だった」とみる。1999年から事実上のゼロ金利制約に直面していた日銀にとって、政策手段は限られていた。残されていた手段が、13年4月から始まった黒田東彦総裁による異次元金融緩和である。「2年で2%物価目標を達成する」と宣言したが、10年がたっても実現していない。

 生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)の前年比は、22年11月時点で3.7%(図1)。賃金の上昇を伴いながら安定的に2%を超える確証を持てないことが、日銀の現状の金融緩和政策継続の判断となっている。

 ドル・円は13年1月初旬に1ドル=80円台半ばから15年にかけて120円台へと円高は是正された(図1)。しかし、22年10月には一時150円台まで円安が進み、「悪い円安」が問題視されるようになった。年初は22年12月、突然の日銀政策修正(事実上の利上げ)で、1ドル=130円台まで円高が進むなど荒い値動きになっている。

 日経平均株価は過度な円高修正から13年1月の1万300円台から2万円を安定的に超える水準となった。21年以降は2万8000円前後で推移していたが、23年の世界経済の減速が予想されることや日銀の異次元緩和修正観測から年初には2万5000円台へと下落(図2)。

 長期金利は当初から1%を下回る水準だったが、16年9月に導入したイールドカーブ・コントロール(YCC)で、0%(プラス・マイナス0.25%)に誘導。22年12月に許容変動幅を0.5%に広げたことから、0.4%を超える水準になっている(図3)。市場では、さらなる変動幅拡大やYCCの撤廃の予想をもとに上昇圧力がかかる。

潜在成長率は低下

 政府の成長戦略によって、持続的な経済成長は実現したか。経済の実力を示す潜在成長率は0.85%(13年度前半)に対して直近は0.22%(21年度後半)へと低下している(図4)。実質GDP(国内総生産)も522.6兆円(13年1~3月)から、546.8兆円(22年7~9月)と24.2兆円増(4.6%増)にとどまる。年率にして0.4%程度でしかない。

 一方で、政府債務は994.4兆円(13年1月)から1258.3兆円(22年10月)へと、263.9兆円(26.5%増)も増加した。日銀が金利を抑え込んできたものの、世界的な金利上昇を受けて、日本の金利にも上昇圧力がかかる。

 前出の小玉氏は「結局、異次元緩和を10年間続けても実体経済への効果は薄く、低インフレが日本経済の根本的な問題ではなかったことが明らかになった」と総括する。

(編集部)


週刊エコノミスト2023年1月31日号掲載

政府・日銀共同声明10年 低物価が景気低迷の原因ではなかった=編集部

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