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教養・歴史 鎌田浩毅の役に立つ地学

人類の時代「人新世」 別府湾が基準地に?/132

 46億年にわたる地球史の中で、人類が繁栄した時代を「人新世(じんしんせい)」と命名しようと、地質学の国際組織「国際地質科学連合」で検討が進んでいる(本連載の第83回を参照)。人新世が始まる基準地の地層を選定中であり、その候補地の一つとして愛媛大学と東京大学などの研究チームが大分県の別府湾を提案している。その名も「ベップワニアン」で、「別府湾時代」を意味するラテン語表記である。

 地質に残された生物の繁栄や絶滅を軸に地球の歴史を区分する「地質時代」では、現在は最後の氷期が終わった1万1700年前から続く「完新世(かんしんせい)」に当たる。完新世から人新世を区分するには、人類が地球環境に大きな影響を及ぼし始めた明確な地質学的特徴が要求され、具体的には1950年代に米国や旧ソ連が行った核実験で拡散した放射性物質が残っているかどうかなどが焦点となる。

 人新世の基準地には現在、別府湾を含め米国や中国など世界12カ所の候補地が提案されている。別府湾は湾口が水深50メートルだが、湾奥には水深70メートルとさらに深い場所があり、無酸素状態となるため海底に生物が生育せず、堆積(たいせき)物が乱されずに降り積もる。別府湾奥の堆積物には、米国が南太平洋のビキニ環礁で行った水爆実験(54年)によって放出された、微量のプルトニウムなどの放射性物質が確認されている。

 なお、国際的には人新世の開始時期は決着がついておらず、農耕開始(約1万年前)や産業革命(18世紀)とする案もあるが、世界各地で核実験が行われた1950年前後を基準とする意見が多い。さらに、基準地の地層から、人類が生産した毒性を持つ化学物質PC…

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