TOKYO強靭化 自然災害対策に地学の知見反映/133
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東京都は昨年12月、5項目の自然災害に対応する「TOKYO強靭(きょうじん)化プロジェクト」を発表した。具体的には「風水害」「地震」「火山噴火」「電力・通信等の途絶」「感染症」が発生する想定で、2040年代をめどに総事業規模15兆円をかけて風水害や地震に強いまちづくりを進める。このうち「電力・通信等の途絶」を含め4項目が地学に関係し、温暖化による気候変動や地震・噴火災害に関する最新の研究成果を踏まえたものだ。
風水害については、40年代までに平均気温が2度上昇するのを基本シナリオとし、1時間当たり降水量が現行想定の1.1倍に当たる85ミリメートルとなっても浸水被害を防げるよう、洪水の際に水を一時的にためておく調節池の整備を行う。また、海面水位が21世紀初頭に比べて最大60センチメートル上昇する予測に対応するため、東京湾の防潮堤のかさ上げや地下鉄の浸水対策を行う。
地震対策では事業規模9.5兆円を見込み、首都圏で19カ所の震源域が想定されている首都直下地震を念頭に、木造住宅密集地域の不燃化などを進める。都はこれまで、1981年以前の旧耐震基準の建物を対象に耐震化を支援してきたが、新耐震基準でも築年数が古い木造住宅(約20万戸)を支援対象に加える。ちなみに、耐震基準は81年に大幅改定されたが、95年の阪神・淡路大震災を教訓に、00年に規定が強化されている。
都が昨年5月に見直した新たな首都直下地震の被害想定では、揺れによって都内だけで建物8万1000棟が全壊し、死者は3200人にのぼるとされる。耐震化が進んだことなどで前回(12年)の想定に比べ3~4割減ってはいるものの、火災などによる死者も含めればさらに被害は増加する。しかし、00年基準の耐震化を100%にできれば、全壊棟数と死者数のそれぞれ8割が減ると試算している。
富士山噴火も想定
噴火対策では東京の100キロメートル西にある活火山・富士山を対象とし、大噴火すれば2時間ほどで都内に降ってくる火山灰がライフラインを止める非常事態への対策を行う。具体的には、4.9億立方メートルの降灰による浄水場の汚染対策を行い、国や他県と…
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週刊エコノミスト
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