生命の起源に迫る「はやぶさ2」の快挙/134
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太陽系は太陽を中心に地球など八つの惑星からなる。それ以外にも小惑星が無数に存在し、火星と木星の間には「小惑星帯」も存在する。太陽系の起源や生命誕生の謎を解き明かすことを目的に、日本から2014年、探査機「はやぶさ2」がH2Aロケットで打ち上げられ、18年には地球と火星の間を公転する小惑星「リュウグウ」に到着した。
はやぶさ2は地球から約3億キロメートル離れたリュウグウで、地表と地下の2地点から岩石試料を採取した後、地球へと向かい、20年12月にオーストラリア南部の砂漠に試料カプセルを着地させた。リュウグウの起源は、氷を主な成分とする「氷天体」である。採取した石や砂などのサンプル約5・4グラムからアミノ酸の分子が検出され、生命の起源に迫る手がかりになると大きな注目を集めている。
アミノ酸は人間や動物などのたんぱく質をつくる材料物質で、生命活動と極めて関係が深い。試料に含まれる化合物を化学分析した結果、炭素4%、水素1.2%、窒素0.17%と有機物に富むことが分かった。さらに、23種類のアミノ酸と脂肪酸など、生命の材料として使われる重要な有機物が見つかった。この中には、体内のエネルギー生産に関係する「アスパラギン酸」や、うま味成分の「グルタミン酸」もあった。
ちなみに、初代の探査機「はやぶさ」が訪れた小惑星「イトカワ」や月からは、アミノ酸は発見されていない。
アミノ酸由来は未決着
地球上のアミノ酸の起源には二つの説がある。その一つは「熱水起源説」で、46億年前に生まれた火の玉状態の地球に大量の降雨があり、地面が冷えて海が誕生してから、深海底にある高温の熱水噴出域で生命が誕生したというものである。もう一つは、宇宙由来説(「パンスペルミア説」ともいう)で、地球に落下した「炭素質隕石(いんせき)」が太古の地球に生命の材料を運んだと考えられている。
ちなみに、これまで地球に落下した隕石からアミノ酸などの有機物が発見されているが、落下途中に地球の大気を通過する中でアミノ酸が付着した可能性を捨てきれない。一方、リュウグウの試料は大気にまったく触れておらず、高温にさらされた痕跡も見られな…
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週刊エコノミスト
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