トルコでM7.8地震 プレート4枚ひしめく多発地域/135
トルコ南部を震源とする直下型地震が2月6日午前4時17分(現地時間)に発生し、激しい揺れに襲われたトルコと隣国シリアで建物の倒壊などによって大きな被害が出ている。米地質調査所(USGS)によるとマグニチュード(M)は7.8で、7日現在で両国の死者が4300人を超えるなど大災害となっている。
トルコではアナトリアプレート、ユーラシアプレート、アラビアプレート、アフリカプレートという4枚のプレート(岩板)がひしめき合い、M7級の地震が繰り返し発生してきた。トルコ南東部にはこうしたプレート境界に沿い、「東アナトリア断層」という大規模な横ずれ断層が南西─北東方向に延びている(図)。
今回は横ずれ型断層地震で、震源が深さ17.9キロメートルと浅いため、大きな被害をもたらした。その後、M6~5級の余震が東アナトリア断層に沿う形で多数発生したほか、約9時間後にはM7.8の震源から北北東に95キロメートル離れたところでM7.5の地震が起き、誘発された東西方向の断層活動も始まった。
M7.8の地震は、地下で長さ190キロメートル、幅25キロメートルにわたって岩盤がずれて動いたもので、余震を含めると震源の広がりは300キロメートルもある。1995年に発生して6400人以上の犠牲者を出した阪神・淡路大震災(M7.3、長さ50キロメートル、幅15キロメートル)よりもはるかに大きい。
ローマ帝国時代にも
東アナトリア断層付近では98年以降、M6級の地震が4回起きている。2020年1月にはM6.7の地震が発生し、建物の倒壊などにより死者が出た。東アナトリア断層の南西端にはかつて、ローマ帝国屈指の都市アンティオキアがあったが、115年にM7.5の地震、また526年にはM7.0の地震でそれぞれ数十万人が犠牲になったとの説がある。
今回の被害拡大の一因は、脆弱(ぜいじゃく)な構造の建物が多かったことにある。地震の被害が大きいトルコやシリアでは、レンガを積んだだけの古い建物が多いため、耐震性が乏しく被害が出やすい。USGSは今回の地震による死亡者数が最大1万人に達する確率が47%になると予想した。トルコの経済的損失は国内総生産(GDP)の1%に達するとの予測もある。
今回のトルコ地震を日本と比較した場合、地震規模に比べて被害が大きくなる実態が改めて浮き彫りとなった。ただ、同じく4枚のプレートがひしめき合う日本にとっても、今回のトルコ地震は人ごとではない。首都直下地震をはじめ、地震対策を早急に進めなければならない。
■人物略歴
かまた・ひろき
京都大学名誉教授・レジリエンス実践ユニット特任教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。専門は火山学、地質学、地球変動学。「科学の伝道師」を自任。理学博士。
週刊エコノミスト2023年2月21日号掲載
トルコでM7・8地震 プレート4枚ひしめく多発地域/135