教養・歴史鎌田浩毅の役に立つ地学

米国も小惑星探査 地球に衝突する確率0.037%/136

 日本の探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから岩石試料を地球に持ち帰ったが、米航空宇宙局(NASA)の探査機「オシリス・レックス」も2020年10月、リュウグウと同様に地球と火星の間を公転する直径約500メートルの小惑星ベンヌから試料採取に成功した。今年9月には地球へ持ち帰る予定で、NASAは1969~72年のアポロ計画の月面探査で月から計382キログラムの岩石や土壌を持ち帰って以来、最大量のサンプルとなる。

 近傍から撮影された二つの小惑星の姿は、いずれも共通してダイヤモンド(または、そろばんの玉)の形をしている(画像)。太陽系の惑星はみな球形をしているが、小惑星はこのような形になっていない。沖縄科学技術大学院大学の研究チームは21年、ベンヌとリュウグウがダイヤモンド形となる原因を突き止め、形成の初期からすでにダイヤモンド形だったという再現シミュレーションに成功した。

 一般に大型の惑星は、自らの質量とそこに働く重力の作用で真球に近い形になる。一方、二つの小惑星はいずれも小さな岩塊で構成されているが、重力が弱いため互いに緩く集まっている。こうした砂の寄せ集めの粒状体では、特有の物理学が働く。例えば、地面に砂を降り積もらせると円すい形の山ができる。ここで、宇宙空間に浮かぶ小惑星が自転をすれば、最終的にダイヤモンドの形になる。

 小惑星はおよそ50億年前に太陽系が誕生する過程で、宇宙に浮かぶちりやガスが集合してできた。その後、約46億年前に地球をはじめとする惑星が形成されたが、惑星にまで成長できなかった小惑星が、火星と木星の間に数十万個も浮遊している。この中には、リュウグウやベンヌのように初期の姿を残しているものがあることから、太陽系が誕生したごく初期の情報を知る手がかりが得られる可能性が高い。

 実は、ベンヌは2182年ごろに地球へ最接近し、地球に衝突する可能性もゼロではない。地球に近づくと地球の重力によってベンヌの軌道が変わり、衝突の確率が変わってくる。よって、ベンヌの周回軌道を正確に知り、地球への衝突確率がどう変わるのかを見定める必要がある。そのため、NASAはベンヌの…

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