トルコ地震も関東大震災も「プレート境界型の内陸地震」だった/137
トルコ南部で2月6日に発生した直下型地震の被災状況と地震の発生メカニズムは、日本で起きる地震とも無関係ではない。地震は地球表面を覆うプレート(岩板)運動で説明される。今回の地震はトルコ国内の大半が占めるアナトリアプレートと、その南東にあるアラビアプレートの境界部で起きた(本連載の第135回を参照)。
前者のプレートは年約20~25ミリメートルの速度で東向きに運動し、後者は年約16ミリメートルの速度で北向きに運動している。両者の間で発生するひずみを解放するため、東アナトリア断層が左右にすれ違うように地下で数~十数メートル移動した。
2月6日の地震ではマグニチュード(M)7.8およびM7.5という規模の大きな地震が立て続けに発生し、国土地理院が宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測衛星「だいち2号」の観測データを基に分析したところ、M7.5の地震では約4メートルの左横ずれが生じていたという。また、地上でも道路が3.3メートル変位したとの報告がある。
こうした断層運動によって最終的に大きなエネルギー(揺れを引き起こす力)が放出された。今回の地震は世界でも最大級で、阪神・淡路大震災(1995年)や熊本地震(2016年)に比べて20倍ほど大きい。とりわけ、震源が陸上の都市直下にあるため被害が甚大になった。
つまり、今回は「プレート境界型」かつ震源の浅い「内陸」地震という二つの異なる現象が重なっている。この点は地学的に重要なので解説しておこう。
関東大震災も同様
一般に、地震はプレート境界とプレート内部で起きるが、前者の方が後者よりも大きな地震を発生させる。例えば、11年の東日本大震災は太平洋プレートと北米プレートの間で起きたプレート境界型地震で、M9.0という約1000年ぶりの巨大地震となった。なお、プレート境界型地震は海底を沈降させるため「海溝型地震」とも呼ばれる。また、15年4月に内陸のネパールで起きたプレート境界型のゴルカ地震(M7.8)は、8500人以上の犠牲者を出した。
一方、阪神・淡路大震災や熊本地震はユーラシアプレート内部で起きたプレート内地震で、いずれもM7.3を記録した活断層型の直下型地震である。ちなみに、マグニチュードは1違うと32倍のエネルギー差が生じるので、M7.3とトルコのM7.8では約20倍の差となる。さらに、プレート内地震でも、内陸部の人口密集地域で起きると、阪神・淡路大震災の6400人超のように多数の犠牲者が出る。
実は、プレート境界型で内陸地震というダブルの現象は、1923年の関東大震災(M7.9)でも起きた。その規模はトルコ地震のM7.8とほぼ同じで、関東南部で10万5000人以上が犠牲となった。関東大震災のようなプレート境界型の地震は、地殻内部で起きる活断層型に比べ、規模が大きく発生間隔が短い特徴がある。今年は関東大震災から100周年に当たり、トルコ地震の教訓を日本でも生かさなければならない。
■人物略歴
かまた・ひろき
京都大学名誉教授・レジリエンス実践ユニット特任教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。専門は火山学、地質学、地球変動学。「科学の伝道師」を自任。理学博士。
週刊エコノミスト2023年3月7日号掲載
トルコ地震のメカニズム 「プレート境界」と「内陸」重なる/137