週刊エコノミスト Online挑戦者2024

チャレンジャー支援にチャレンジ――波多江直彦さん

はたえ・なおひこ 1983年東京都生まれ。2006年慶応義塾大学法学部卒業、サイバーエージェント入社。ベンチャー企業への投資事業などに携わる。18年7月にイークラウド設立。(撮影 武市公孝)
はたえ・なおひこ 1983年東京都生まれ。2006年慶応義塾大学法学部卒業、サイバーエージェント入社。ベンチャー企業への投資事業などに携わる。18年7月にイークラウド設立。(撮影 武市公孝)

イークラウド代表取締役 波多江直彦

 株式投資型クラウドファンディングでスタートアップ企業と多くの人をつなぐ。(聞き手=和田肇・編集部)

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 金融庁によって2015年に導入された「株式投資型クラウドファンディング制度」に基づく、スタートアップ企業への投資機会の提供に取り組んでいます。株式投資型クラウドファンディングとは、スタートアップ企業などが非上場の株式を発行することにより、インターネットを通じて、資金を集める仕組みです。この仕組みは金融商品取引法の規制対象で、当社のようなこれを扱う事業者は、金融商品取引業者として、財務省への登録が必要になります。登録した事業者は、株式を発行するスタートアップ企業の財務状況などを審査し、適当と認めたもののみを扱います。株式投資型クラウドファンディング制度では、同じ会社が資金調達を行うことができる金額が1年に1億円未満、投資する側も投資できる金額は、同一の会社が発行する株式につき1年に50万円以下という上限ルールがあります。現在、調達・投資の限度額を拡大する議論が、規制当局や業界団体で行われています。

 株式投資型クラウドファンディングでは、投資の勧誘や投資額に関して、当社のような業者がウェブサイトを閲覧させたり、電子メールを送信する方法によってのみ、投資勧誘が認められており、電話や訪問による投資勧誘はルール上禁止されています。投資家は株式投資型クラウドファンディングを通じて得た株は、その会社が上場するまで売買することはできません。私たちは2018年の会社設立以来、これまで累計30件、約9.9億円超の株式投資型クラウドファンディングを成功させてきました。当社のホームページを見ていただければ分かりますが、現在も多くのスタートアップ企業を紹介しつつ、投資を募っています。スマートフォンを通じて投資することもできます。

スマホで投資を行うこともできる〈イークラウド提供)
スマホで投資を行うこともできる〈イークラウド提供)

新しい企業もっと知ってほしい

 学生の頃から、何か新しい分野の仕事に携わりたいと思っていました。それで大学を卒業してサイバーエージェントに入社し、スタートアップ企業への投資事業などに関わってきました。よく米国など海外の方がベンチャー企業が多くあり、活発だといわれますが、私の経験では、日本だってスタートアップ企業を立ち上げようとする人は、すごくたくさんいるんです。私が会った人だけでも1000人を超えるのではないでしょうか。ただし、スタートアップ企業を支援する仕組みという部分では、確かに今までは必ずしも十分でなかった面はあると思います。そうした思いもあって、18年にこの会社を立ち上げました。資金面では、趣旨を理解していただいた大手証券会社さんから支援をいただきました。

 スタートアップ企業への投資というと、これまで“エンジェル投資家”など一部の資産家に限られていました。今後はより多くの人に「日本にはこんなにたくさんのスタートアップ企業がある」ということを知ってもらい、応援していただければと思っています。挑戦しようとしている人たちがたくさんいます。そういう人たちと多くの皆さんを結び付けられたらと考えています。


企業概要

事業内容:株式投資型クラウドファンディングによる金融取引

本社所在地:東京都中央区

設立:2018年7月

資本金:8499万円

従業員数:20人


週刊エコノミスト2024年4月30日・5月7日合併号掲載

波多江直彦 イークラウド代表取締役 挑戦する人の支援に挑戦する

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