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経済・企業 挑戦者2024

建築資源が循環する文化を作ろう――豊田訓平さん

とよだ・くんぺい 1992年千葉県生まれ。ゼネコン設計部で意匠設計・構造設計合わせて200を超えるプロジェクトを経験。その後デザイン事務所へ転職し、商業施設の設計を手掛ける。2021年、ボーダレス・ジャパングループの一員として「HUB & STOCK」を設立。1級建築士。(撮影 武市公孝)
とよだ・くんぺい 1992年千葉県生まれ。ゼネコン設計部で意匠設計・構造設計合わせて200を超えるプロジェクトを経験。その後デザイン事務所へ転職し、商業施設の設計を手掛ける。2021年、ボーダレス・ジャパングループの一員として「HUB & STOCK」を設立。1級建築士。(撮影 武市公孝)

HUB & STOCK代表取締役社長 豊田訓平

 新品同様の建築資材が毎年40万トン以上捨てられている。この「もったいない」を何とかしようと3年前に起業した。資源循環のハブの役割を担う。(聞き手=位川一郎・編集部)

>>連載「挑戦者2024」はこちら

 建築資材ロス問題の解決に取り組む専門の会社です。建材メーカー、商社、工事会社などから、壁紙、タイルカーペット、フローリングなど余った未使用の資材を買い取り、アウトレット価格で販売しています。

 資材が余るのは、建築空間が「一点物」で、必要な資材の種類や量が毎回異なるからです。物件引き渡しが遅れた時のペナルティーは重く、工事会社は資材を多めに入れて絶対遅れないようにする商慣習があります。メーカーも欠品させないように在庫を持ちますが、世間のニーズにより数年ごとに商品の改廃が行われ、廃番となったものはカタログからなくなります。もったいないとみんな気づいているけれど、倉庫にあっても販売できない。経済合理性の下では処分するのが一番安くなってしまうんです。

 こうした余剰建材は主に「建設混合廃棄物」というカテゴリーで処分されます。国土交通省のデータでは、2018年に建設産業廃棄物で最終処分された量は全国で212万トンあり、そのうち建設混合廃棄物は84万トン。使えるのに廃棄される建材は年間40万トン以上と推定されています。

格安、DIYで人気

 HUB & STOCKの役目は、行き場を失った建材を回収し管理して次の方に使ってもらうことです。建材を原料に戻すリサイクルよりも、そのまま使った方が循環型経済の観点で消費エネルギーは少ない。あらゆるコストが上がる中で、使いたい建材が費用をかけて捨てられるギャップも埋められます。創業から3期目の2024年3月期は188トンの資源を回収し、前期の1.5倍以上に増えました。

倉庫に並ぶ建材の在庫(HUB & STOCK提供)
倉庫に並ぶ建材の在庫(HUB & STOCK提供)

 倉庫に600種類、1万2000点以上の在庫があります。価格はメーカーの希望小売価格の7、8割引き。ホームセンターのアウトレットコーナーや、インスタグラム、LINEなどのSNSを通じて販売し、個人やデベロッパー、ゼネコンにも使ってもらっています。

 販売の半分ぐらいはDIYで部屋のリノベーションをする個人向けで、SNSの総フォロワー数は2万人弱います。お客の約半数が女性。SNSで「こんな使い方あるよ」というコミュニティーができています。オンラインカタログを更新すると、30分で売り切れる商品もあります。

 ゼネコンでの新人時代、マンションの杭(くい)工事に立ち会いました。大きな穴を掘って鉄筋とコンクリートを流し込むんですが、工事の番頭さん(管理者)がぼそっと「建設って環境破壊だよな」と言ったのが忘れられません。その時は「そうなんですか?」と聞き流しましたが、杭は建て替え時の再利用が難しいんです。その後、商業施設のインテリアデザインに携わり、もったいない建材が多いことを再認識しました。余剰建材を扱う会社は、ありそうで、ない。「これはもう作るしかない」と起業しました。

 先日、中古マンションのリノベーションを手掛ける「リノベる」などと、現場で余った資材を効率よく回収するスキームを発表しました。今後、回収の面で地域循環型の拠点をどんどん増やしていきたい。パートナーを広げ、資源循環の文化を作ることが使命だと思っています。


企業概要

事業内容:建築資材リユース・アウトレット販売

本社所在地:東京都板橋区

設立:2021年4月

資本金:1000万円

従業員数:2人


週刊エコノミスト2024年4月2日号掲載

豊田訓平 HUB & STOCK代表取締役社長 建築資源が循環する文化を作ろう

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