ビル屋上などでの野菜作りをAIとスマホアプリで支援――芹澤孝悦さん
プランティオCEO 芹澤孝悦
ビルが建ち並ぶ都会の屋上で、住宅街近くの公園で、そして家のベランダで。あなたの「推し農園」で野菜作りをしてみませんか?(聞き手=永野原梨香・ライター)
野菜作りを諦める大きな理由が「育て方が分からない」と「場所がない」。この解消と、コミュニティー形成に取り組んでいます。
主力事業はビルの屋上や公園の一角でのコミュニティー農園事業「grow FIELD」です。スマートフォンにアプリ「grow GO」をダウンロードし、農園に掲示されているQRコードをスキャン。農園名がアプリ上に表示されるので有料登録すると、野菜のお手入れと収穫ができるようになります。
棒状の「grow CONNECT」を畑に挿しておけば、搭載されたセンサーが収集した土壌温度や湿度、日照のデータなどをAI(人工知能)が分析し、必要なお手入れ内容がスマホのアプリに通知されます。例えば、種まきや水まきのタイミング、間引きをした方がよいのかなど、必要なお手入れ内容の通知に従ってお手入れをします。「水やりをしました」などとアプリ上でコメントをすれば、同じ農園をフォローする人とお手入れ内容をシェアすることができます。
農園ごとに金額は異なりますが、月額平均1500円(税込み)でお手入れと収穫ができ、収穫した野菜を自宅に持ち帰れます。レストランに持ち寄り食すといったイベントで割引を受けられることもあります。
grow CONNECTがあれば、野菜作りに迷うことはありません。よほど日照時間などが特異な場合は別ですが、1農園につき、grow CONNECTを1本、土に挿しておけば大丈夫。開発にはスタートアップのShiftall(シフトール)(東京都中央区)にお世話になりました。土壌の温度が何度になったら発芽するかなど、種から収穫までに必要な栽培データを滋賀大学を中心とするチームと連携して研究。地域や天候に合わせたお手入れ通知を届けられるようになりました。
コロナ禍で農園事業は難しくなり、半導体不足でgrow CONNECTの製造も困難だったのですが、昨年から再び動き出しました。会社全体の売り上げは一昨年に比べると昨年は約10倍です。農園導入費用は面積などに応じて300万~7000万円ほど。三菱地所、タニタ、出光興産などと農園をオープン。現状、農園は21カ所です。遊休地を人が集う場所にし、環境にも貢献したいという企業は増えています。
食と農に触れる機会を
祖父は、園芸用品メーカー、セロン工業の創始者で1955年にプランターを開発した芹澤次郎です。時代と形を変え、これからも食と農に触れる機会を創出したいです。まもなく提供を始めようとしているのが、家庭用「grow HOME」。土と種とgrow CONNECTが届き、ベランダや庭で野菜を育てられます。もちろん、近くの農園を使うこともできます。
経済産業省の支援プログラム「J-Startup」に選ばれていますし、海外にも進出していきます。
多くの人がベランダやビルの屋上で野菜を育てるという、安全安心な食と農にアクセスできるライフラインを持つ。そして、1週間に2、3回は自身で育てた野菜が食卓に並ぶ社会になったらと思っています。
企業概要
事業内容:野菜栽培ガイドシステムの提供、農と食のあるまちづくりのコンサルティングなど
本社所在地:東京都渋谷区
設立:2015年6月
資本金:2億5532万円
従業員数:非公開
週刊エコノミスト2024年4月16・23日合併号掲載
芹澤孝悦 プランティオCEO ビル屋上や公園での野菜作りを支援