北海道東川町のコーヒー自家焙煎店奮闘記 北條一浩
有料記事
『田んぼの中のコーヒー豆屋 東川町で起きた八年間の奇跡』
著者 轡田紗世さん(ヨシノリコーヒーコミュニケーションズ マネージャー)
最高品質の豆、焙煎、水 そしてコミュニケーション
「コーヒーの店というとカフェをイメージする方が多いと思いますが、私たちの店・ヨシノリコーヒーは、最高品質のスペシャルティコーヒーを専門にするビーンズショップ(自家焙煎(ばいせん)店)です。来てくださったうちの8割くらいのお客さんがその後もこちらが焙煎した豆で日々のコーヒーを楽しんでくれています」
著者・轡田紗世さんはそう語る。店名の「ヨシノリ」は、夫で代表取締役の轡田芳範さんの名前から。店舗は二つあり、一つは旭川駅前店。もう一つの本店が北海道東川町にある。東川町は豊かな自然環境と子育て支援、ミネラルバランスが最高といわれる地下水など特長が多く、移住希望者が後を絶たない人気の町。地元の人々はもちろん、理想のコーヒー豆に出会えない「コーヒー難民」が遠方から訪れる。
「12~14カ国の豆を扱っています。豆はすべて生産者とのダイレクトなやり取りで、1回の買い付けで60回ほどのカッピング(いれたてコーヒーの味と香りを観察)を行います」
サラリーマンだった夫から突然、「独立したい」と言われ、途方に暮れてから今日まで8年間の苦闘の歴史が書かれている。産後21日にして本店隣の自宅に引っ越し、その後、夫が救急車で担ぎ込まれたり、スタッフの給料が払えずへそくりを崩したこともあった。そもそも「コーヒーを飲むと気持ち悪くなるくらい苦手でした」というから驚かされる。
「ところが、札幌の名店『工房 横井珈琲』さんが提供してくれた『エチオピア イルガチェフェG1』を飲んで、こんなにフルーティーなコーヒーがあるなんて、と驚嘆し、概念が大きく変わったんです」
日本から遠く離れた生産地の人々が精魂込めて作ったスペシャルティコーヒーを、日本…
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週刊エコノミスト
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