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国際・政治 東奔政走

異次元の少子化対策にリスク 首相を縛る「防衛」と「増税」 松尾良

首相官邸に入る岸田文雄首相(2023年1月19日)
首相官邸に入る岸田文雄首相(2023年1月19日)

 自民党の甘利明前幹事長が年明けの1月5日、BS番組でこう発言して波紋を広げた。

「子育ては全国民に関わり、幅広く支える体制を取らなければならない。将来の消費税(増税)も含め、地に足をつけた議論をしなければならない」

 その前日には、岸田文雄首相が「異次元の少子化対策に挑戦する」とぶち上げていた。

 高齢者の増加が社会保障を圧迫する一方、昨年の出生数は80万人割れが確実視され、少子化が加速している。「これ以上放置できない、待ったなしの課題だ」という首相の認識は、過去の政権の無策をうっかり認めてしまったことを脇に置けば、その通りである。

 そして首相は「将来的な子ども予算の倍増」の大枠を6月の骨太の方針に盛り込む考えも示した。首相の盟友で、党税調の幹部も務める甘利氏の発言は、それとリンクしているのではないかと受け止められた。

 だが、防衛力強化のための増税方針が昨年末に決まったばかりの時期だ。「また増税か」と反発が起きた。今春に統一地方選を控え、与党から「甘利氏は不用意だ」と憤る声も上がった。

 首相周辺は慌てて火消しに回った。松野博一官房長官が「消費税に当面触れることは考えていない」と強調し、甘利氏も同じように釈明した。

絞り尽くした財源

 それでも、次の看板政策を巡る財源問題は、今後もくすぶり続けるはずだ。何しろ、今の岸田政権にはカネがない。

 赤字国債の発行が常態化しており、長期債務残高は初めて1000兆円の大台を超えた。予算は膨張し、新型コロナウイルス禍や、ロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高などにも対策を打ち続ける必要がある。そこに防衛力強化が加わった。

 首相は昨年11月末、5年後の2027年に防衛関連予算を国内総生産(GDP)比2%まで倍増させろと号令をかけた。防衛支出はそれ以降も続く。恒久的な財源を確保しなければ賄えない。

 歳出改革や決算剰余金、税外収入などで絞り出しても足りず、首相は不足分の年1兆円強を「税制でお願いしなければならない」と明言した。急ごしらえで示された増税の対象は法人、所得、たばこの3税だ。

 世論は反発した。昨年12月の毎日新聞の世論調査では、財源のための増税に69%が反対し、社会保障費など他の政策経費を削ることには73%が反対だった。国債発行も52%が反対した。防衛費を大幅に増やす政府の方針に対しても、賛成が48%、反対は41%と意見が割れた。

 賃金が上がらず、値上げラッシュに悩む人たちからすれば「出費が増えるのも、行政サービスが減るのも困る。かといって、子や孫につけを回すのは……」というのが正直なところだろう。内閣支持率は25%に下落し、政権発足以降の最低を更新した。

説明足りず自業自得も

 言うまでもなく増税は人気のない政策である。しかし、時間は十分あったのに国民に説明せず、唐突にそれを決めた首相の「身から出たさび」ともいえる。

 昨年の国会で防衛…

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週刊エコノミスト

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