米で雇用とインフレ抑制の両立論 タカ派のサマーズ氏も軟化 岩田太郎
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米国では2022年12月の雇用が引き続き力強い成長を示す一方、失業率は3.5%に低下して、50年ぶりの低水準となった。加えて、同月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが前年同月比6.5%と、ピークの昨年6月(同9.1%)と6カ月連続で鈍化。これを受けて、米論壇では「インフレは、利上げで失業者を増やさなくても下がる」との見解が議論されている。
米進歩派シンクタンク「グラウンドワーク・コラボラティブ」のチーフエコノミスト、ラキーン・マブード氏は1月12日付の分析で、「昨年12月のCPIは、物価上昇率を下げるために失業率を増加させる必要がないことを明確に示した」と論評した。
ニューヨーク市立大学のポール・クルーグマン教授は1月13日付の『ニューヨーク・タイムズ』紙で背景を解説。「米経済は新型コロナウイルス対応の大規模財政出動や米連邦準備制度理事会(FRB)の引き締め初動の遅れで過熱していた。そのため、『21年以来の物価高は一過性のものだ』と主張した私を含むインフレ楽観派エコノミストたちは、物価が上昇し続ける中で認識が間違っていたことを認めざるを得なかった」と振り返った。
続けてクルーグマン氏は、「ところが1年半を経て立場は逆転した。今回は、失業率を高くしなければ物価高は退治できないとするインフレ悲観派が誤っているようだ」との見方を披露した。
こうした「インフレ悲観派」の代表はローレンス・サマーズ元米財務長官やビル・ダドリー前ニューヨーク連銀総裁だ。ダドリー氏は1月2日にブルームバーグテレビに出演し、「FRBが効率的に失業率を引き上げなければ、2%のインフレ目標は達成できない」と語って…
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週刊エコノミスト
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