経済・企業

東証の上場経過措置 最短で26年度末終了 森下千鶴

上場基準の形骸化も懸念されていた(東京証券取引所)
上場基準の形骸化も懸念されていた(東京証券取引所)

 東京証券取引所は1月25日、プライム市場などの上場基準に満たなくても暫定的に上場を認める経過措置を、2025年3月以降順次終了する案を公表した。これまでは経過措置の適用期間は「当分の間」とし、終了時期を明確に示していなかった。

 22年4月に東証はプライム、スタンダード、グロースの三つの新市場区分に移行し、各市場のコンセプトと上場基準を以前より明確化した。その際、すでに東証に上場していた企業に対しては、新しい上場基準に満たなくても各市場に上場することができる経過措置が設けられた。

 実際に経過措置適用企業は、22年末時点でプライム市場269社、スタンダード市場200社、グロース市場41社と各市場とも1~2割を占めている。この経過措置の適用期間の期限が当初設けられなかったため、明確にしたはずの上場基準の形骸化が懸念されていた。

 今回の東証が公表した案が施行された場合、25年3月以降に到来する基準日から、すべての上場企業に対して本来の上場維持基準が適用されることになる。基準に抵触した企業は、1年間の改善期間が設けられた後、監理・整理銘柄に指定され、原則6カ月間で上場廃止となる。

 3月本決算企業であれば、最短で26年3月末に猶予期限が終了することになる。ただし、26年3月以降に計画期限を定めていた企業については、当初定めた計画期限における適合状況を確認するまで監理銘柄として市場に残ることができる見込みである。

スタンダード移行も

 また、旧・東証1部に所属していたプライム市場上場企業は、施行日から6カ月間は審査なしでスタンダード市場へ移行できる機会が設けられるため、基準との乖離(かいり)が大きく達成が難しい企業は、救済措置を利用してスタンダード市場への移行を選択するか判断が迫られる。

 未達企業の約8割は計画期限を26年3月までに設定しており、今後は業績の改善による流通株式時価総額の上昇など、上場維持基準を達成することがこれまで以上に強く求められる。さらに、現在は基準を達成している企業についても、今後、企業価値が向上しなければ、基準を下回り経過措置の適用や上場廃止になる恐れがあるため、継続的な企業価値の向上が求められる。

 経過措置の終了期限決定により、市場の健全な新陳代謝の促進や、市場全体の価値の底上げにつながることが期待される。東証は今後、正式に制度を取りまとめた上で今春にも規則を改正する方針で、引き続き定期的に状況を点検し、企業価値向上のための取り組みに実効性を持たせることが大切である。

(森下千鶴・ニッセイ基礎研究所金融研究部研究員)


週刊エコノミスト2023年2月14日号掲載

東証の経過措置 基準達成の猶予期限 最短で26年3月末に=森下千鶴

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