経済・企業

29年に米欧中で新車の過半数がEVに 東南アジアでも市場拡大 野辺継男

インドネシアでも中国製の小型EVは人気(上汽通用五菱汽車〈ウーリン〉の格安EV)=ジャカルタで2022年12月_Bloomberg
インドネシアでも中国製の小型EVは人気(上汽通用五菱汽車〈ウーリン〉の格安EV)=ジャカルタで2022年12月_Bloomberg

 世界各国で販売・生産ともにEVへのシフトが急速に進んでいる。中国製EVの輸出も増えており、市場の動きはあまりに早い。

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 2022年年間の世界のEV(電気自動車)販売台数は、1060万台(前年比57%増)で、世界の全自動車販売台数の約18%を占めた。EVとはバッテリーEV(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHV)を指し、ハイブリッド車は含まない。この中で日本のEVのシェアはわずか0.5%にすぎない。

 図1は、EV市場の大半を占める中国、米国、欧州の3地域での年間出荷量をグラフ化し、EVと非EVに分けたものだ。ブルームバーグNEFでは、日本での新車販売におけるEV比率は今後も世界の「平均以下」と予測されている。この図で注視すべきは、29年に米欧中の世界3大市場合計で自動車出荷の過半数(51%)がEVになると予測される点である。

 さらに、このEVシフトの動きは東南アジアなどの新興国でも見え始めている。世界の全自動車市場における「米中欧」以外の地域の台数シェアはおおむね3分の1だが、EVにおける同地域の比率は現状で5%だ。一方、日本国内におけるEVの比率は、昨年ようやく1%を超えたが、タイではすでに2%を超えている。さらに、ブルームバーグNEFは東南アジアでのEV販売が22年に急拡大すると予測する(図2)。特にタイの拡大が顕著だ。

 タイでは昨年2月から東南アジアで初めてEVに15万バーツ(約50万円)の現金補助を開始している。タイ政府は、30年までに新車販売の30%をEVとする目標で25年までに430億バーツ(約1700億円)を割り当てる。

 現在自動車生産世界第10位のタイは、今後東南アジアのEV製造拠点とする政府ビジョンがある。中国のBYD(比亜迪)はすでにタイでEV販売を開始しており、昨年9月にバンコク郊外に海外初のEV工場の建設計画を発表している。

中韓がバッテリー投資

 さらに、インドネシアは、EVの電池製造に欠かせないニッケル埋蔵量で世界の4分の1を占め、20年から政府がニッケルの資源としての輸出を規制している。これに対し、中国や韓国企業は、早い時期からインドネシアでニッケルの加工・製錬、正極材などを生産する製造工場への投資を発表した。特にバッテリー生産で世界首位の中国CATL、同2位の韓国LGエナジーは、25年までに同国でそれぞれ少なくとも25ギガワット時(EVで約25万~30万台分)のEV用バッテリーを製造する計画だ。

 そして昨年8月以降、インドネシアでもEVの販売が急拡大している。特に、中国で5000ドル(約64万円)以下の…

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週刊エコノミスト

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