物議醸す「肥満は遺伝」発言 給食にも原因が垣間見られ 峰尾洋一
有料記事
米国で暮らす中で頻繁に耳にする単語がある。「Obesity(肥満)」だ。最近の調査では、米国人の肥満率は男女共に32.6%に及ぶ。これは日本の3.6%の約9倍であり、世界的にも非常に高い水準にある。
無論、政府もこの問題に無関心ではない。農務省と保健福祉省がまとめる「米国人の食事ガイドライン」の現行版で、食事由来の慢性疾患の冒頭に挙げられているのが「太りすぎ・肥満」だ。
2023年1月に次期ガイドライン作成のための諮問委員が選ばれた。そのうちの一人、ハーバード大学准教授で肥満専門家のファティマ・コーディー・スタンフォード氏の指名が話題になっている。理由は、彼女がテレビ番組で「肥満の多くは遺伝性疾患であり、食事制限や運動では改善されないケースがある」と発言したためだ。
スタンフォード氏は黒人女性で、黒人や女性への差別問題について積極的に発言をしてきた。肥満の問題では、「医療関係者側に差別感情があり、遺伝性疾患の場合でも食事制限や運動を続けられないなど、患者に責任を押し付ける発想に走る」と指摘している。
この発言に批判の声が上がった。理由はいくつか考えられる。バイデン政権の指名なので、保守系の論客は批判の論陣を張る。「肥満を理解せず、差別感情がある」と言われた医療関係者の反発は当然だ。米国のダイエット・エクササイズの市場規模は2000億ドル(26兆円)ともいわれるが、業界全体に悪影響を与えるような発言を見過ごすことはできない。
遺伝の問題とは別に、一般にいわれる米国人の肥満の原因はさまざまだ。食べ過ぎ、早食い、運動不足などが挙げられる。
レストランに行けば食べきれない量の料理が出される。持ち帰ることもでき、無理に完食する必要はないが、やはり目の前に並べられると自然と食べる量は増…
残り609文字(全文1359文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める