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国際・政治 東奔政走

疑念晴れぬ官邸の人権意識 注目集まるLGBT法案提出 中田卓二

衆院予算委員会で野党の質問に答える岸田文雄首相。同性婚などをめぐる論戦が繰り広げられた(2月8日)
衆院予算委員会で野党の質問に答える岸田文雄首相。同性婚などをめぐる論戦が繰り広げられた(2月8日)

 LGBTQなど性的少数者や同性婚に関する差別発言で荒井勝喜前首相秘書官が更迭された。岸田内閣では昨年、「政治とカネ」の問題などで4人の閣僚が相次いで辞任したが、政権の人権意識そのものに疑念が生じた点で、事態はより深刻だ。

 荒井氏の発言は2月3日夜、首相官邸でのオフレコ(オフ・ザ・レコード)取材中にあった。荒井氏に限らず、岸田内閣の首相秘書官は退庁時などにオフレコ取材に応じ、岸田文雄首相の方針や政策立案の背景を解説している。記者は録音や録画をせず、発言者を特定しないことが前提だ。

首相発言が引き金に

 この日の荒井氏への取材では、首相が1日の衆院予算委員会で同性婚や選択的夫婦別姓について「すべての国民にとっても家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と答弁したことを踏まえた質問が出た。「社会が変わってしまう」には導入に否定的なニュアンスがあったからだ。

 これに対し、荒井氏は「見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ。同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」「秘書官室もみんな反対する」と述べた。その後、荒井氏は「見るのも嫌だ」など一部を除いて発言を公式に認め、撤回、謝罪した。

 翌日、首相は「岸田政権は持続可能で多様性を認め合う包摂的な社会を目指す。今回の発言はこの政府の方針とはまったく相いれないもので、言語道断だ」と険しい表情で記者団に語り、荒井氏を更迭した。判断が遅れたら、その影響は閣僚の「辞任ドミノ」の比ではないと考えたからだろう。

 しかし、辞めさせて終わりとはいかなかった。いくら荒井氏が「個人の意見」と釈明しようとも、そうした発言をしてしまう土壌が首相官邸にあるという疑いは、簡単には晴れないからだ。

 首相は昨年8月の内閣改造で自民党の杉田水脈氏を総務政務官に起用した。杉田氏は過去に月刊誌で性的少数者を「生産性がない」と表現したことがあり、党内でも人事を危ぶむ声が出ていた。案の定、先の臨時国会で杉田氏は野党の追及を受け、「職責を果たすだけの能力がある」とかばった首相も閉会後に交代を決断した。

 杉田氏が辞任した昨年12月27日、首相は同氏から「もとより差別意識はなく、説明を尽くしたが、結果として国会審議に迷惑をかけることになった。区切りがついたこの時点で辞任したい」と伝えられたことを明かした。杉田氏の人権意識を辞任の理由にすれば首相の任命責任に跳ね返る。自発的に辞めた形にするほかなかった。

 同性婚を認めると「社会が変わってしまう」という首相の答弁について、松野博一官房長官は2月6日の衆院予算委で「荒井氏は関与していない」と否定した。一方で、法務省が作成した答弁原案にはこの文言がなく、「質疑応答を繰り返す中で発言があった」とも説明。首相のアドリブだったことを認めた。政府関係者は「保守派への配慮だったのだろうか」と首をかしげる。

 首相は8日の衆院予算委で「同…

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