教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

防衛費を増税で賄うというが、平和への道は軍備増強しかないのか/164

内村鑑三(1861~1930年)。日本のキリスト教思想家。日本独自の無教会主義を唱えた。非戦論者としても知られる。著書に『代表的日本人』などがある。(イラスト:いご昭二)
内村鑑三(1861~1930年)。日本のキリスト教思想家。日本独自の無教会主義を唱えた。非戦論者としても知られる。著書に『代表的日本人』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 防衛費を増税で賄うというが、平和への道は軍備増強しかないのか 軍備増強のために防衛費がかさむため、国民的な議論もなく増税が決まりそうです。大きな反対がないのは、不安定化する世界の現状を踏まえ、誰もがやむを得ないと思っているからでしょう。でも本当に軍備増強しか手段はないのですか?(医療事務職・50代女性)

A 軍備が戦争を保障する。ゆえに無抵抗によって悪を無化する手段を選択すべきです

 たしかに防衛費を増額して軍備を増強するというのは、世界の趨勢(すうせい)のようにも見えます。しかし、そんな世界の趨勢にあらがい、第二次世界大戦後、平和主義を貫いてきたのが日本です。その意味では、今回の決定は大きな政策転換ともいえます。

 多くの国民がやむを得ないと思っているのは事実ですが、でもその是非は別にして、日露戦争前夜、多くの国民が戦争に賛成する力とうねりを生みました。そんな中で果敢に非戦論を貫いた内村鑑三の思想を参考に考えてみましょう。

 内村はキリスト者の立場から平和を唱えました。とりわけ彼の無抵抗主義には、キリスト教を感じさせます。なにしろ、悪を絶つ方法としては悪に譲るよりほかにいい方法がないというのですから。つまり、悪を正そうとして戦うのではなく、無抵抗によって悪を無力化するよりほかないといいます。

勝利と復讐は一対

 そこから無軍備論を唱えるに至ります。軍備があるから戦争をするというわけです。…

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週刊エコノミスト

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