教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

親の葬儀をどこまで簡素化していいものでしょうか/165

マイケル・ローゼン(1952年~)。イギリス出身の政治哲学者。ハーバード大学教授。専門は英米の政治哲学。著書に『On Voluntary Servitude』(未邦訳)などがある。(イラスト:いご昭二)
マイケル・ローゼン(1952年~)。イギリス出身の政治哲学者。ハーバード大学教授。専門は英米の政治哲学。著書に『On Voluntary Servitude』(未邦訳)などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 親の葬儀をどこまで簡素化していいものでしょうか 以前より葬儀の簡素化が進んでいます。さらにコロナ禍でその傾向に拍車がかかりました。とはいえ、自分の親の葬儀をどこまで簡素化していいものか悩んでいます。(製造業再雇用勤務・60代男性)

A 自らの人間性の証しとしての敬意の表現=尊厳を基準に考えてみよう

 葬儀の簡素化にはさまざまな理由があるようですね。仏式にこだわらない人々の価値観の変化、高齢化が進み参列者に負担があること、さらに追い打ちをかけるようにコロナ禍で人が集まりにくくなったことなど。

 たしかに、葬儀は簡素化した方が、主催する側にとっても参列する側にとっても楽であるのは事実です。ただ、なぜか心が引けるのもよくわかります。どこかしら死者の尊厳を軽んじているような気がするのでしょう。

 そこで参考にしたいのが、イギリス出身の政治哲学者マイケル・ローゼンの思想です。彼はまさに死者の尊厳について論じています。そもそも尊厳とは、人間に対するものです。でも、死者は人間といえるのかどうかが問われます。宗教の文脈を取り除くと、人が亡くなった後そこに存在するのは、正確には人間ではなく遺体だからです。

遺体は尊厳の対象か

 では、なぜ遺体に尊厳があるといえるのか? ここでローゼンは尊厳の根拠となるいくつかの主要な立場を挙げ、そのおのおのを批判します。例えば、人間に利益を与えるから尊いとする人間主義。しか…

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