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中国とイラン+湾岸諸国 米国“撤収”につれ相互依存アップ 斉藤貢
イランのライシ大統領が2月14日、中国を20年ぶりに公式訪問して習近平国家主席と会談した。両国は2021年、経済・安全保障の25カ年の包括的戦略パートナーシップ協定を結んでおり、今回の訪問はイラン・中国関係の一層の緊密化を印象付けた。
習主席は一方、イランが対立するペルシャ湾地域の他の国々にも関与を強めている。昨年12月にはサウジアラビアを公式訪問し、ペルシャ湾岸6カ国の湾岸協力会議(GCC)首脳会合にも出席した。実は中国は、ペルシャ湾地域に原油輸入の約50%を依存しており、関係を強化しようとすることは当然であろう。
中国とペルシャ湾地域との関係強化が急速に進む背景には、米国のペルシャ湾政策の変化がある。18年にトランプ前大統領が対イラン経済制裁を一方的に再開すると、イランから原油を輸入するのはほとんど中国だけとなってしまい、中国はイラン経済の生命線となっている。
また、GCC諸国は安全保障面で長年、米国の安全保障の傘に依存してきた。しかし、米国がシェール革命で世界最大の産油国になると、ペルシャ湾地域の重要性が低くなり、21年夏の米軍のアフガニスタン撤退が象徴するように、米国はこの地域に対する安全保障上の関与を低下させている。
その結果、依然としてイランの覇権主義、イスラム過激主義テロの脅威にさらされているGCC諸国は、自分の身は自分で守るか、米国に代わるパトロンを探す必要性に迫られている。サウジアラビアは最近、イランの弾道ミサイルに対抗するために中国から弾道ミサイル製造設備を輸入したといわれている。
緊張緩和の仲介も?
また、アラブ首長国連邦(UAE)は米国から最新鋭ステルス戦闘機F35の購入を中止する一方、中国から高等訓練用戦闘機L15を12機、及び多数のドローンを購入している。GCC諸国は経済のみならず、安全保障面でも中国を頼りにしようとしているように見える。
米国は手を引きつつあるとはいえ、この地域に4万人近い兵力を常駐させている。また、日本を筆頭に米国の同盟国は依然としてこの地域の原油に大きく依存しており、米国はペルシャ湾地域を簡単に中国に明け渡すわけにはいかないであろう。一方の中国には、米国のように軍事力を常駐させる能力は現時点ではない。
しかし、中国は今後、影響力を強めるためにGCC・イラン間の緊張緩和を仲介する可能性がある。仲介に成功した場合、GCCは中国により傾斜しよう。
(斉藤貢・岡崎研究所コメンテーター、前駐イラン大使)
週刊エコノミスト2023年3月7日号掲載
FOCUS 中国の中東外交 イランと会談で緊密化 湾岸諸国にも関与を強化=斉藤貢