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資源・エネルギー 住宅と太陽光発電

インタビュー「新築住宅に太陽光を設置して“日本の需要”を創造」小池百合子・東京都知事

 東京都は2025年から新築住宅への太陽光パネルの設置を義務化する。狙いを小池百合子・東京都知事に聞いた。(聞き手=稲留正英/荒木涼子・編集部)

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── まずは、新築住宅に太陽光パネルの設置を義務化する狙いについて。

■東京都は2000年を基準年として30年にカーボンハーフ(温室効果ガスの5割削減)、50年にゼロエミッション(温室効果ガスの排出ゼロ)を目指している。二酸化炭素(CO₂)についていえば、首都東京の排出量の7割が建物由来で、うち戸建て住宅など家庭が3割を占める。オフィスビルのCO₂削減は既に排出権取引で実績がある。そこで今回は家庭に焦点を当てた。

「義務化」という言葉に引っかかる人も多いかもしれないが、対象は個人の家庭ではなく、毎年一定以上(供給延べ床面積が2万平方メートル以上)の住宅を建てている住宅メーカーだ。日当たりの良いところ、悪いところ、また、狭小住宅は屋根の面積が十分でないこともあるので、そういう課題を取り除き条例案を策定した。最近は個人の初期投資がゼロのリース型もある。

 現在、エネルギーの供給が非常に不安定で、電気料金も大きく跳ね上がっている。そうした中、都が義務化することで、イノベーション(技術革新)も進んでいく。実際、太陽光ではフィルム型のペロブスカイトという新素材の開発も進んでいる。

東京の力は「購買力」

── 1400万人の都民がいる東京都が率先することのインパクトは大きい。

■東京の力は何かといったら、「購買力」だ。そこを動かすことにより、日本の産業を前に推し進める力となる。東京の力を活用していきたいと考えている。

── 既存の住宅に対する太陽光パネルの設置は。

■そこは以前から、普及のために補助金を出している。今回、なぜ、新築かというと、毎年新築の住宅が4万~5万戸増えており、50年時点で都内の住宅の7割は今後新築されるものに置き換わるからだ。今から建築される住宅が50年の東京の姿を形作る。だから、新築の家には太陽光を義務付けていく。東京都の建物総数(225万棟)のうち、太陽光パネルが設置されているのは4%に過ぎない。まだ、96%のポテンシャルがある。一方、国の方では、25年4月から新築住宅の断熱・省エネ化を義務付ける。それとタイミングを合わせる形でのスタートにした。

 政府は太陽光については、30年までに新築戸建ての6割に太陽光パネルを設置する目標を立てているが、その道筋は明確でない。地域で見ても国内には降雪地帯もあり、全国一律というのは、なかなか難しいところがある。

── その意味でも、東京都が率先してやる意味があると。

■私が環境大臣だった時、国から補助金をもらい、太陽光パネルの設置を進めた。ところが、06年度の予算を確保しようとしたら、財務省から「産業としては成熟した」という理由で、予算を切られてしまった。だが、気候変動対策は始まったばかり。補助金が終わったことはとても残念に思っていた。

 当時は、京セラ、シャープ、パナソニックと日本のメーカーがとても元気で、日本の環境技術は世界の憧れだった。その後、パネルの生産は海外メーカーに主導権が移っていった。いざという時に、日本に産業がないというのはとても寂しい。だから、需要を作るという意味でも、東京都でパネルの設置を進めていきたい。

── 太陽光の特性を考えると、発電は昼間だが、電気が多く消費されるのは夜間で、昼間の電気をためる装置も不可欠だ。電気自動車(EV)は蓄電池として有効だが、東京都は交通機関のEV化も進めていくのか。

■もちろんだ。新築の家には太陽光パネルだけでなく、EV用の充電設備の整備を義務付ける。また、車本体の購入のほか、急速充電施設についても補助金を出している。

 ちなみに、我が家では10年前から太陽光パネルを設置し、国産のEVを乗り継いでいる。今回、家と車の間で電気を融通しあうV2H(Vehicle to Home)装置と蓄電池も導入し、電力会社に電気を頼らない自給自足の「オフグリッド」にしようと思っているぐらいだ。

パネル回収で協議会

── サステナビリティー(持続可能性)という観点から、使用済みパネルの処分は大きな課題だ。

■これも、私が環境大臣だった十数年前からずっと準備している。実際に多くの廃棄パネルが出てくるまでまだ10年くらいあるが、それに備え、都では、昨年9月にリサイクル業者、メーカー、メンテナンス業者などで構成する協議会を作り、リサイクルルートの確立に取り組んでいる。

── 今回、再エネに絡んで総額1500億円の基金を設置したが、その用途は。

■太陽光に対する補助とか、再エネを広げるための周知とか、さまざまな目的の費用を持たせている。

水素エネルギーの普及にも力(17年3月、燃料電池バスに試乗する小池氏)
水素エネルギーの普及にも力(17年3月、燃料電池バスに試乗する小池氏)

── 水素エネルギーの活用については。

■2020年東京五輪・パラリンピックの選手村跡の居住区(晴海フラッグ)について、水素の活用を進めている。また、「東京の玄関口」である羽田空港とその周辺で、製造時にCO₂の発生しない「グリーン水素」の活用を検討している。モビリティーの分野でいうと、水素を使った燃料電池車(FCV)の都バスは都内に約70台走っている。東京ほど水素バスが走っている都市は世界を見渡してもない。あとは、水素ステーションをどう確保していくか。供給体制も整えないと普及は難しい。「水素の充填(じゅうてん)」と「電気の充電」の両方で整備を加速させたい。


 ■人物略歴

こいけ・ゆりこ

 1952年兵庫県出身。76年カイロ大学卒業。ニュースキャスターを経て、92年参議院議員に初当選。93年衆議院議員、2003年環境大臣、07年防衛大臣を経て、16年8月から東京都知事。


週刊エコノミスト2023年3月21日号掲載

太陽光発電 インタビュー 小池百合子 東京都知事 新築住宅の太陽光設置で需要創造 EV充電施設の整備も義務化

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