ヤフー・LINE・ZHD3社合併 QR決済は“共存”へ 鈴木淳也
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LINEとヤフー、親会社のZホールディングスの3社合併には、「類似サービスの統合」という大きな関門が待ち構えている。
事業整理の加速は前途多難
日本のオンラインサービス大手であるLINEとヤフー、その親会社にあたるZホールディングス(ZHD)の3社は2023年度中をめどに合併し、4月より新体制へ移行することを2月2日に発表した(図)。
もともと21年にLINEを取り込む形でヤフーと並列の事業体とし、その親会社にあたるZHDを両社出身の経営陣らが共同で運営にあたる「経営統合」が実施されてきた。
これまでZHDはヤフー系の川辺健太郎氏とLINE系の出沢剛氏の両名が共同責任者という体制だったが、4月以降は川辺氏が会長に就任する形で出沢氏が単独の責任者となり、指揮系統を一本化して判断を迅速化する。
効果薄だった経営統合
もともとLINEとヤフーが経営統合した目的は、競争力の強化にある。電子商取引(EC)の分野では楽天とアマゾンという巨大なライバルがおり、主力のネット広告においても競争が激化している。そこで、国内でも最大手サイトであるヤフージャパンと、9000万人超という利用者を抱えるLINEの強みを生かしつつ、経営統合でコスト削減と効率化を実現し、さらに研究開発投資の増大によって、国内のみならず海外事業の強化を図ることを目標に掲げていた。
経営統合後、グループとしての売り上げ収益は増加傾向にあった。しかし、22年度に入ってからは主力である広告事業の成長率が急減。特に成長市場である動画広告での競争力が弱く、体制の抜本的な見直しが急務となり、今回の発表につながった。
市況の悪化もあるが、何より大きな問題は経営統合で本来なされるべきだった事業整理が進んでいないことにある。両社のサービスは重複領域が多く、運営上の効率化もあまり進んでいない。今回の合併には類似サービスの連携強化と統廃合を加速化する目的もあるが、両社サービスの利用に必要なアカウントIDの統合に加え、独自の経済圏を構成するポイント事業においても統合の道筋は見えていない。両社のサービスは実質的に分断された状態のままであり、一体化には時間がかかるのが現状だ。
2月の合併会見では、こうした重複領域や競争力の低下した事業について、22年内に行われた事業整理が紹介されている。
LINE関連では、同社が展開していたライブドアのメディア事業を、投資家向けメディア事業を営むミンカブ・ジ・インフォノイドに売却し、LINEブログを終了。ヤフー関連では「ヤフーチケット」と「ヤフー副業」の二つのサービスを終了し、セレクトショップとして運営されていた「ペイペイモール」を「ヤフーショッピング」に統合した。また、「ヤフー占い」も「LINE占い」への統合を発表しており、比較的影響の軽微なサービスの整理が進んでいることが分かる。
動画配信サービスでは業界でも老舗の「GYAO!(ギャオ)」を終了、ライブ配信サービスの「LINEライブ」と合わせて、「LINEブーム」への統合を発表している。LINEブームは、主に若年層を中心に人気を博しているTikTokやYouTubeショートなどのショートムービー配信を行うサービスで、前述の動画広告事業での出遅れを挽回するための施策となる。ただ、ギャオについては利用者自身が動画を配信するサービスとは異なり、どちらかといえばネットTVに属する。ZHDは今年1月、民放の見逃し放送の無料配信を行うTVer(ティーバー)との業務提携を発表しており、ギャオが担っていたコンテンツ配信事業はこちらに引き継がれることになる…
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週刊エコノミスト
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